年間キャンペーン第2部
通い合う心
検証 コミュニケーション力

おやじの会「接点」


「地域づくり」の原動力期待
どう広げるメンバーのすそ野


 「おやじの会が子供を育てる活動は、すそ野が広がってこそ意味がある。その活動は地域づくりにもつながることだから」

 地域と学校教育のかかわり合いを研究する道教育大学釧路分校の玉井康夫助教授はこう語り、おやじの会の存在に大きな期待を寄せる。そして、これを実践する方法として、コミュニケーションの重要性を強調する。

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帯五中おやじの会による中学校のトイレ掃除奉仕
(2003年3月)


風潮変わった「父親は仕事」

 かつて、家庭と教育現場にあった「父親は仕事で忙しく、教育は母親に任せきり」という風潮は今や形を変え、父親は学校行事への参加や清掃奉仕、通学路パトロールなど、わが子の学校生活の支援に積極的に身を置くようになっている。こうした活動の主体となっているのが「おやじの会」。近所の父親が自発的に集まり、共に手を取り合う。

 「活動する父親の一義的な動機は『わが子のため』だとしても、父親が複数集まって意見を交わせば、活動の視点は『地域全体』へと広がっていく」と玉井助教授。つまり、おやじの会の活動は、子供を育てる「人づくり」がメーンだが、それを目的にする父親が集うことで、「地域づくり」に発展するという見解だ。そして、その原動力となるのが「コミュニケーション力」ということになる。

子供との信頼関係を再構築

 管内で活発に活動する帯五中おやじの会の田中幸弘会長は「おやじの会で活動し始めて、子供と学校のことで話ができるようになったメンバーも多い」と打ち明け、その意義を実感する。父親による教育現場への参画は、子供との信頼関係を再構築するのが最大の狙いでもある。

 玉井助教授も「これまで、教育現場から離れていたことで、子供とのコミュニケーションが希薄だった。しかし、『父親が子供のために一生懸命になっている姿』を子供に見せることで、子供の信頼を獲得できるようになった」と言い切る。

 さらに田中会長は、子供との接し方が変わったもう1つの理由に、ほかの父親との交流を挙げる。おやじの会では、教育現場に対するアプローチを考える際、父親たちが子供から得た情報を持ち寄り意見を交わす。

 あるおやじの会は月に1度の割合で、父親たちが週末の夜に近所の居酒屋に集い、酒を酌み交わしながら教育談議に花を咲かせる。

 仕事や家庭の愚痴に終始するときもあるが、「父親同士の親交を深めることにも活動の意義がある。子供の実情にも話が及ぶし、ここから得た情報によって子供との新しい接点も見つかる」(メンバーの1人)とし、活動全般におけるコミュニケーションの重要性を指摘する。

輪が小さいと効果も小さい

 ただ、おやじの会の運営に参加するのは、大抵一部の積極的な父親だけに限られ、「コミュニケーションの幅が小さければ、それだけ効果も薄くなってしまう」と玉井助教授は指摘する。さらに、子供の在校時は積極的だった父親が、卒業と同時に会を離れるケースも多く、多くの会の運営に携わる父親からは「メンバーのすそ野をどうやって広げていくかが常に課題になっている」との声が多い。

 こうしたジレンマを、「個々の父親によって子育て(教育)の価値観は千差万別」との言葉で片づけるのは簡単だ。しかし、地域内の温度差を少しでも解消していかない限り、「人づくり」は「地域づくり」につながらない。いかに父親をおやじの会に引き込むかがカギとなる。

 おやじの会の活動は年々積極化。人々のコミュニケーションが希薄になっている今、おやじの会が地域を1つにまとめ上げる原動力となる期待もある。しかし、そうしたおやじの会を構成するのは父親1人ひとり。家庭や地域に対する意識や向き合い方が改めて問われている。

(杉原尚勝)(05.4.5)

<おやじの会>父親が学校教育に参画する場として、全国の小・中学校を中心に広く発足している。学校関係組織に位置付けられるPTAとは違い、あくまで自発的に活動する任意団体。帯広市内でも現在、小学校26校中11校、中学校15校中4校で立ち上がっている。最近では、おやじの会同士が横の連携を持つようになり、相互に情報交換するなどし、より広域的に活動を展開する動きも見られる。

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