年間キャンペーン第2部
通い合う心
検証 コミュニケーション力

北の屋台 「生き抜く力」


店主の魅力 集客をけん引
「共同体の輪」 外部への拡大課題


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すべては人と人のつながり

 「人にはそれぞれの物語がある。北の屋台にはそのドラマが満載されている」。こう口をそろえるのは、北の屋台の運営母体「北の起業広場協同組合」で専務を務める坂本和昭さんと久保裕史さん。人気店の代表格である店主の1人は「裸の自分を出し、心をこめて接客すればお客さまはまた来てくれる。すべては人と人のつながり」と言い切る。

 屋台は「一に大将(店主)、二にメニュー(味)、三、四が無くて五に値段」と言われる。北の屋台でも、店主のキャラクターが営業成績の良しあしを分ける重要な要素になっている。屋台のだいご味は、見ず知らずの人との新しい出会いやコミュニケーションであり、さりげなくそれを演出するのが店主の役回りだ。

 屋台村のほぼ中央に建つ、シンボル像「ikinukin(いきぬきん)」。「お客さまがほっと一息『いきぬき』をしていただくやすらぎと、店主が第二の人生を『生き抜く』力強さ」を表現した。北の屋台の原点がここにあるとすれば、それをけん引するキーワードは「人」であり、「コミュニケーション」ということになる。

 コミュニケーションの重要性は店と店の関係にも当てはまる。北の屋台では「仮設性」という屋台の特徴にこだわり、厳冬期を除き毎日の組み立て・収納を各店に義務づけている。坂本さんは「建てっぱなしでは横町と何も変わらない。作業の途中で隣同士が助け合い、そこからは人情も生まれる」と理由を話す。

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お客や店同士が毎夜、心を通わせ合う「北の屋台」。“コミュニケーション力”の向上は、中心市街地全体の将来を占うキーポイントだ

不便さ選んだ「帯広方式」

 ただ「便利さはコミュニケーションを殺す」の持論の下、あえて選んだ「不便さ」が周囲に理解されないことも多い。全国各地に次々と派生した後発の屋台村では、ほとんどが「帯広方式の不便」を敬遠した。その結果、店主同士のコミュニケーションが欠落し、今では帯広方式を見直す動きも出始めている。

 はた目には順風満帆と映るが、北の屋台の運営にも課題はある。坂本さんと久保さんは「ブームは今年あたりがピーク」と、店主らの楽観に待ったをかける。「店主の半分以上は集客、売り上げの伸びに安心し切っている。北の屋台そのものがブームに支えられていることを忘れた店主の慢心が一番怖い。『食わせてやっている』と言わんばかりの頑固おやじのラーメン屋とは違うのだから」

「永住の地」に関係者は複雑

 北の屋台の創業目的の1つに「起業家の育成」がある。屋台村での営業は本来、単なる通過点であるはずが、現実にはここを「永住の地」と決め込む店主も少なくない。創業から4年近くを経て独立を果たした店はわずか3店。そのうちの1店は既に廃業している。独立に当たって実力の過信は禁物だが、もっと「巣立ち」を促進させたい−。関係者の心中は複雑だ。

 至上命題である「コミュニケーション」にも、ほかの飲食店との連携面で課題が生じている。特に、屋台効果が届かない地域の店からは「北の屋台にお客を取られた」「屋台は値段が高い」といった声が聞かれる。これらを「やっかみ」と切り捨てることは簡単だが、一方ですべてを無視することは早計にすぎる。

 なぜなら北の屋台の出発点は、人材の発掘・養成とともに「郊外店に対抗できる中心市街地の再生」にあるからだ。その中核となる北の屋台を一過性のブームに終わらせず、共同体としての輪を外に広げる。屋台村の原点である店主らの「生き抜く力」は、地盤沈下の進む中心市街地という、より広い視点で試されようとしている。
(國井正行)(05.4.4)

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 自主自立の精神が強いとされる十勝住民は、人づくりの面においても熱心さが際立つ。しかし、この一方では関係機関・団体同士の連携が不足し、「独り善がり」の活動にとどまっている一面も否定できない。年間キャンペーン「十勝の『人間力』地域連携のひとづくり」の第2部では、人間力を支える“コミュニケーション”の現状を検証する。

 

<北の屋台>帯広市西1南10。間口10・8メートル、奥行き49メートルの縦長の区画に18軒の屋台が並ぶ。中心市街地の活性化を目指すTMO(タウンマネジメント機関)事業の指定を受けたほか、食品衛生法をクリアするために下水道完備の固定式店舗を設置するなど、2001年7月の開業にこぎつけた。以来、屈指の成功例として全国150市町村から約1500人が視察に訪れている。

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