生きる力の源泉
全国先進地ルポ

香川県・「麺通団」


若者がうどんブーム演出
産業を育て人づくりも


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地域文化が素材

 「人を動かすことはすべての地域文化のスタンスに通じる。食やレジャー、歴史を含めたさまざまな文化が素材になる」。全国的なブームになった「讃岐うどん」もその1つ。仕掛け人となったのが、香川県善通寺市の四国学院大学で情報加工学を教える田尾和俊教授(48)だ。「面白い視点の人材」の育成に取り組み、講義に集まる大勢の学生に対して「ヒット企画を生み出すコツ」を伝授している。

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 讃岐うどんブームを探ると、県内のうどん店の詳細情報を全国発信した地元タウン誌の情報収集チーム「麺(めん)通団」にたどり着く。田尾さんはそのブームの火付け役となった同団の団長だ。

 香川県は言わずと知れた讃岐うどんのメッカ。今や人口100万人の県内に約800のうどん店が軒を連ね、まちを歩けばうどんに関する情報には事欠かない。単なるグルメ情報から発した麺通団の活動は、こうした地域主要産業の形成に一役買っただけでなく、県内に「うどん巡礼」(うどん店のはしご)の観光客を呼び込むきっかけをつくった。

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対象を細分化

 生活に溶け込んだ素材を生かして地域再生を図る−。結果として麺通団の活動はそのアプローチになった。しかも、これに反応して動いたのは「次代を担う若者」だった。

 面白い企画を立てる秘けつは「誰に対してどのように企画を仕掛けるか、対象を細分化すること」。「子供からお年寄りまで楽しめるものという視点にはもともと無理がある」というのが田尾さんの持論だ。

 「歴史や伝統だけでは若い人は動かない。私たちは若者が面白がるものとして“うどんレジャー”を投げ掛けた」

 このアプローチは県内から広い支持を集め、全国へも一気に波及した。紹介店は活気づき、後継者不足に悩んでいた各店はここ数年で息を吹き返した。さらに、新たなうどん職人が急激に増え出し、勢いは今も衰えていない。地域にとっては、うどんブームが産業育成や地域の活性化につながり、さらに「人づくり」への貢献という、うれしい副産物を生んだ。



四国学院大学の教壇でヒット企画のつくり方について講義する田尾さん。教室はいつも学生たちでいっぱいだ

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再生の“呼び水”

 「今やうどん店は県内全飲食店の1割を占める産業の中心。全国的なブームで観光面にも貢献した」として、同県庁は2003年4月、田尾さんに「第1回かがわ21世紀大賞」を贈り、「地域再生」の“呼び水”となった麺通団の貢献をたたえた。

 だが、田尾さんは決して手放しでは喜ばない。「県のイメージアップのためにしたことではない。偶然、全国的ブームになったが、あくまでうどん店のおじちゃんやおばちゃん、製めん企業、うどんを食べに来る人たちを支援するための活動であり、みんなが喜んでくれることがうれしいだけ」と話す。

 面白い企画に人は動き、それを見てほかの人たちも動く。バイタリティーあふれる田尾さんの話を聞いているうちに、食をはじめ地域文化を育てるのはやはり「人」であることを実感した。「うどんブーム」の成り立ちを語る田尾さんの講義は、きょうも学生たちであふれ返っている。(道下恵次)(05.1.8)
 


<麺通団>1989年、地元タウン誌「タウン情報かがわ」のグルメ連載企画「ゲリラうどん通ごっこ」の調査チームとして発足。「讃岐うどんの周りで遊ぶ」をテーマに、穴場店めぐりを繰り広げた。調査結果をまとめた著書「恐るべきさぬきうどん」(全5巻)では決して完成品や店内の写真は使わず、店舗地図も概略だけ。読者に「探す楽しみ」を提供したことがうどん巡礼の観光客を生んだ。
 

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