生きる力の源泉
全国先進地ルポ

長野県・茅野市「CHUKOらんどチノチノ」


中高生だけで施設利活用
若者の夢を育てる場に


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ダンスの教室も

 「こんなおれでも、取りえを見せることができた。仲間に囲まれて幸せ」。照れながら話すのは、不登校で高校を中退した少年(17)。昨年のクリスマスイベントで空手を披露し、自信を深めた。また、毎日のようにダンス教室で踊りの練習を続ける高校1年の男子生徒(15)は「将来はダンサーになりたい」と言い切り、額の汗を光らせた。

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 子供たち自身が企画・運営して夢や希望をかなえる−。長野県茅野(ちの)市のJR茅野駅前にある大型ショッピングセンターの一角。市の多目的スペース「茅野市こども館」の中に、地元の中・高生が運営する中・高生のための施設「CHUKOらんどチノチノ」がある。

 一歩足を踏み入れると、一面鏡張りのダンス教室や音響機材が整った音楽室の存在に驚かされる。簡単なキッチンを備えた歓談ルームなどもあり、放課後になると大勢の中・高生が集まり、思い思いの時間を過ごす。

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放課後になると大勢の中・高生がチノチノの歓談ルームに集まる。ダンスやバンド演奏に汗を流し、常に笑い声が絶えない

テナント跡利用

 チノチノが誕生したのは2002年4月。同センター内の撤退した大型テナント跡を利用した。財務管理やイベント企画などの運営は、すべて地元の中・高生でつくる運営委員会が仕切る。施設設計や利用規約策定などの開設準備も、当時の中・高生が手掛けた。成人市民によるサポート委員会はあるが、助言するのは子供たちの求めがあった場合だけ。あくまでも主役は子供たちだ。

 施設利用も子供だけに限られ、大人の目を一切気にする必要がない。彼らと同じ年ごろにバンド活動をしていた記者の周辺には、そんな施設は1つもなかった。多感な世代だけで刺激し合い、思い思いの目的に打ち込める環境にうらやましささえ感じた。

 ただ、「子供たちによる運営」には当初、多くの大人から反発があったという。「市が率先して若者のたまり場を作るのか」−。教育関係者らの非難は特に厳しかった。何度もワークショップを開き、市民レベルで腹を割って教育論議を重ねた。最終的に「子供を信用できる大人になろう」との共通認識で決着した。

 「子供の教育を通じて、大人も成長していこうとする独自の地域教育が確立した瞬間だった」。ワークショップで事務局員として立ち会った長田泉こども館館長は当時を振り返る。

 開設から2年半。その中ですべてが期待通りだったわけではない。開設当初には施設内で高校生の喫煙が発覚し、問題になったこともあった。当時の運営委員会は利用する子供たちを交えて連日、利用方法を議論した。

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自己責任芽生え

 「問題を起こせば大人に施設を取り上げられるとの思いがあったかもしれないが、子供たちに自己責任の気持ちが芽生えたことも確か。結果がどうあれ、解決に取り組む姿勢が大切」。サポート委員でもある市職員の山本貢史さんは力を込める。

 結果的に、大人の助言は一切受けなかった。利用者同士による監視態勢を確立、その後、問題は起きていない。施設利用者は年間延べ1200人前後。地元の中・高生の大多数が施設を利用している。

 利用者の境遇を問わず、「こんなおれでも…」と思わせる空間。このチノチノを舞台に、若者の夢と生きがいが確実にはぐくまれている。(杉原尚勝)(05.1.5)
 

〈茅野市〉長野県のほぼ中央、八々岳連峰西南ろくに位置する。人口約5万6000人。1996年から地域福祉と生活環境、こども・家庭支援を3本柱にした「パートナーシップのまちづくり」を重点施策にし、2003年12月に条例化した。市民と行政が協働する取り組みで、これまで全国に先駆けたごみの分別収集体制や保健、医療、福祉が連携した独自の福祉ネットワークも構築している。

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