年間キャンペーン第5部

光は観えるか
立国への課題と方策

6.目指せ人づくり


究極の資源「人」 育てる教育を

底辺拡大、実践積み重ね必要

素材あるのに「心」ない十勝

 「十勝には素材はいっぱいあるのに“心”がない。心を伝えるには、まずは人をきちんと育てることだ」。水辺の環境学習や自然体験活動の拠点施設「北海道エールセンター」(帯広市東15南4)。運営する「帯広NPO28サロン」のトレーナー太田昇さん(73)は“人づくり”の大切さをこう話す。

滞在型観光を目指す「大樹のグリーンツーリズムを考える会」の学習会。農家民宿や酪農体験農場などについて地道な学びが続く


 自然環境教育を主にした活動だが、帯広観光体験ボランティアガイドの会会長も務める太田さんの中では観光振興においてもこれがあてはまる。「人こそ究極の観光資源であり、だからこそ教育が大切。時間はかかる。でも“急がば回れ”ですよ」と明快だ。

 同サロンが自然体験や川遊びのガイドの育成を始めて5年。河川の特性や救命救助法、植物の毒性の有無などを講義と実習で計21時間学び、これまでに管内で約150人が全国組織で認証される資格を取得した。30−50代で学校教諭や会社社長、看護師ら職業もさまざま。「バスに乗って案内を聞くだけの観光は終わり、五感を使って体験したいという人が増えてきた。ガイドの底辺が広がれば、十勝の観光振興に必ずつながる」と太田さんは力を込める。

農家民宿の経営者育成

 大樹町では、農村観光の推進を目指して4年前に発足した住民組織「大樹のグリーンツーリズムを考える会」(大石富一会長)が今年から、農家民宿を担う経営者育成に動き始めている。

 専門家を講師に、宿を建てるまでの流れや経営管理、もてなし方などを学ぶ講習会。過去2回の講座には町内外の農家ら約60人が参加し、関心の高さをうかがわせた。採算や接待面での不安などもあり、開業にはまだ至っていないが、「直ちにそうならなくても、来訪者にのんびりと自然に触れる楽しさを気軽に伝えられる人材を育てていきたい」(大石会長)という。

 体験型観光へのニーズが高まる中、こうした人材育成の取り組みは行政の施策となっても表れ始めている。道が一昨年創設した「アウトドア資格制度」もその1つ。山岳やカヌーなど5分野のガイドを道が認証するもので、管内からはこれまでに全道(409人)の1割を占める49人が取得した。十勝支庁では新たに、十勝の観光情報や生活風土、歴史などを総合的に紹介する「十勝ガイド」の育成事業にも着手した。

兼業難しいガイド資格者

 資格取得者数の多さからみても、体験型を中心に十勝観光の担い手づくりは着々と進んでいるように見える。しかし、実際にそうなのか。

 前出の帯広NPO28サロンでガイド資格を取った人は、登録の上、エールセンターを拠点に体験の案内奉仕をする。今年度、管内の小・中学生ら約4000人を受け入れたが、有資格者の中には本業を抱え、ガイドの仕事を引き受けられない場合も多いという。1人で28回の案内を引き受けたガイドもいた。

 太田さんは「知識ではなく知恵が大事。ただ勉強するだけでなく、地道な実践の積み重ねが必要だ」と強調する。

 観光振興において叫ばれる情報発信もホスピタリティー(もてなしの心)も、結局、行き着くところは「人」だ。その底辺を広げ、いかに実践を深めていくか。それができたとき、真の「スロー大国・十勝」が見えてくる。

(おわり)(深田隆弘)(04.12.20)
 

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