年間キャンペーン第5部

光は観えるか
立国への課題と方策

5.磨け、情報発信力


「人」「物語」の伝達がカギ

地域固有の資源が重要に

人情味あふれるメッセージ披露

 「それでは十勝の生産者からのビデオレターをお届けします」。10月20日、東京プリンスホテルで開かれた「とかちであそぶ観光説明会」の一場面。会場を埋めた約60人の旅行業者は、人情味あふれるメッセージに思わず表情を緩めた。

帯広競馬場で開催中の「ばんえい競馬」。北海道遺産にも選定され、地域固有の資源として関心が集まっている



 十勝観光連盟、帯広観光コンベンション協会が昨年から、道央圏、首都圏、関西圏を対象に実施している「観光プロモーション」。「体験」をキーワードに管内で観光や農業に取り組む人を前面に押し出し、会場では生産者がバター作りや押し花の講習も開いた。東京会場のアンケートでは48人中45人が「説明が役に立った」と回答。「十勝の具体的なイメージがわいた」とする人も多く、上々の反応を示した。

 十勝の観光大使を務める名鉄観光西日本支社大阪メディアセンターの野竹鉄蔵課長は「以前に比べれば、十勝のプロモーションは間違いなく高いレベル」と評価する。

“心の介在”がキーワード

 その理由は「人」。野竹課長は「旅の第1目的は癒やしや、のんびりとした時間であっても、結果的に“心の介在”がその土地の印象となる。苦労してシラカバの森をつくったおじさん、花畑を広げたおばさん…。地域の名物おじさんや歴史を背景に感じさせる情報発信が大切だ」という。

 社として国内観光の動向を調査しているジェーティービー北海道(本社札幌)の土田秀樹帯広支店長も「これからのキーワードは知的欲求を満たす旅。旅の余裕が生まれた団塊の世代の多くがその土地から“学ぶ”ことを求めている」とした上で、「そこに行ってみたいと思わせる具体的な人の物語があること」と指摘する。

 問題はこうした「名物おじさん」や「物語」をどう見つけ、伝えていくかだ。今年10月、「馬文化」として北海道遺産に選定された世界唯一の「ばんえい競馬」の関係者たちは、常にこの課題に向き合ってきた。

 十勝の馬産者でつくる十勝馬事振興会の佐々木啓文会長は「十勝の基盤をつくったのは極寒の地を切り開き、人に潤いを与えてくれた農耕馬にほかならない。だが、北海道の人々からでさえ、その存在は忘れられようとしてきた」と話す。


ばんば伝える絵本を製作

 そんな危機感から、同会は今年3月、絵本「赤べえ」を製作した。機械化が始まった昭和40年代の農村を舞台に、1頭の老馬と人間の別れを描き、忘れられていた「馬のいる十勝の原風景」を発信した。

 「ほかにも、生産者としてやれるだけのことをやってきた。正直、反応がなかったのは行政だけ。『ばんば』を、産業や観光振興に結び付けようという視点なんてまるでなかった」と佐々木会長はいう。

 かつて6万3000頭を超えた管内の農耕馬も、来年には2000頭を切るといわれる。開拓の名残であるこの馬の姿を見ることができるのは、今や「ばんえい競馬」の中だけだ。

 「十勝には“原石”がたくさんあるのに、磨き方を知らない」(佐々木会長)とは、観光振興を語る上でよく言われてきたことだ。足元にありながら、忘れかけている地域固有の資源をどう見直し、どう「物語」として発信していくか。「ばんば」を思う同会の取り組みもまた、その大切さを教えている。

(酒井花)(04.12.18)
 

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