年間キャンペーン第5部

光は観えるか
立国への課題と方策

3.伝わるか、もてなしの心


必要な十勝全体の意識共有

求められる地道な積み重ね


 「(先進地である)あの京都でさえ、こんなに熱心にやっている。うかうかしてはいられないな」。観光地としてのもてなしの質を高めようと12日、京都商工会議所が初めて実施した「京都・観光文化検定試験」(通称・京都検定)。古都の歴史や文化に関する博識ぶりを問う同検定のニュースが流れた翌日、帯広市の竹内俊観光課長は驚きを込めて話した。

多くの観光地主要な戦略に

 観光振興を目指す上で今や必要不可欠とされるホスピタリティー(もてなしの心)の向上。スロー観光が時代の潮流となる中、リピーターや交流人口獲得の面からも重視され、全国的にも多くの観光地が主要戦略の1つに掲げている。

 管内でも、十勝観光連盟(十観連)や旅館、飲食などの各関連団体が接客マナーを主に研修会を継続するなど、もてなしを意識した取り組みに努めている。地元タクシー業の経営者や後継者らでつくる十勝ハイタク事業青年会(奥昌憲会長)もその1つで、今年4月には乗務員の観光知識や接客能力向上に向け、管内観光地を巡る“実地”研修にも挑んだ。

 「旅行形態の変化(小グループ化)でジャンボタクシーの需要が増えるなど、微風だが追い風が吹いている。まだ足掛かりだが、業界の厳しい現状を少しでも打破できれば」と奥会長。

管内の観光施設を巡った十勝ハイタク事業青年会の乗務員実務研修会。ホスピタリティー向上へ関係者の模索が続く(今年4月、帯広百年記念館で)


 市民レベルでは帯広観光体験ボランティアガイドの会(太田昇会長、会員32人)が高齢者、障害者を含めた観光案内活動を展開。鹿追町でも今年から町民ボランティアの育成が始まるなど、もてなしの土壌は徐々にでも整いつつある。

 しかし、十勝のホスピタリティーに対する評価は現実には厳しい。十勝支庁が今年5月にまとめた札幌圏の旅行エージェント対象のアンケート結果では、「観光業界の一部のみが優れたホスピタリティーを備えているだけ」が52%。「地域全体で温かく迎える姿勢を感じる」は24%にとどまった。十観連が全国を対象に同じ項目で実施した調査でも、ほぼ同様の傾向を示している。

右肩下がりで顧客獲得重視

 「もてなし」という目に見えづらい部分での評価ではあるが、実際、地元の関係者からは「末端の従業員まで意識が行き渡っていない。観光が右肩下がりの中で、客の獲得ばかりに目が向いているのでは」と自省の声が聞こえて来る。

 行政にしても、まちの観光振興方策で「地域全体での受け入れ」をうたいはしても、「現実の取り組みとしては難しさがある。方向性はあっても、具体的にどう目指していいのか見えにくいテーマ」(竹内課長)というのが本音のようだ。

 では、どうすべきなのか。多くの関係者が口にするのが「地域挙げての意識の共有」。その手段として、現在は大半が個別に取り組む研修事業や観光ガイドなどの連携を図る「オール十勝の仕組みづくり」の必要性を唱える声は強い。

 ホスピタリティーの問題に詳しい札幌国際大学観光学部の丹治和典助教授は「ネットワーク形成は意識を共有するための具体的手立てとなる」とする一方、「もてなしにおいては、仕事の現場だけでなく普段の出会いも大切。そう考えると行政や企業レベルでは限界もある。小学校からの独自の教育プログラムの展開など、早い時期からの地道な積み重ねが必要」と提言している。
(金谷信)(04.12.15)
 

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