ゆとりへの旅路
全国活性化ルポ

岩手県宮古市


もてなしを主要戦略に
まち挙げて意識を醸成

◆◇−−−−◇◆

危機感の中で

 「本州最東端のまち、みやこにようおでんした(よくおいでくださいました)」。花巻空港から連絡バスと快速列車を乗り継いで約3時間。駅に降り立つと、改札口の真上から少し控えめな横断幕が出迎えてくれた。人口約5万3800人。陸中海岸国立公園のほぼ中央に位置する岩手県宮古市が、「もてなし交流観光都市」を宣言して3年になる。

phot
 宮古市にとって、観光は水産業と並ぶ基幹産業の1つ。同国立公園の代表的な景勝地として知られる「浄土ケ浜」をはじめ、自然景観を大きな売り物に観光地としての地位を築いてきた。

 しかし、ピーク時は年間約152万人(1992年)を数えた観光客の入り込みも、近年の景気低迷や観光地間競争の激化などを背景に減少傾向にある。2002年実績では約105万人と大台割れ寸前。危機感の中で01年元日、市は「もてなし交流観光都市」を宣言、ホスピタリティー(もてなし)を主要戦略として明確化した。

 市商工観光課の佐藤省次課長は「うちは新幹線も通らず、高速道路も空港もない。ないものねだりをせず、地域性を最大限生かした中で観光地としての質を高める。そんな1つの決意表明として打ち出したのがこの宣言だった」と話す。

◆◇−−−−◇◆

phot

昨年7月に結成された「宮古もてなし隊」の西村隊長と同隊のユニホーム。浄土ケ浜を望むレストハウスのテラスで

基盤づくり着手

 具体的な実行計画として「宮古もてなしプラン」事業を展開。宮古観光協会(澤田克司会長)との連携の下、これまでに(1)マニュアル本「宮古もてなし読本」の作製(2)駅前観光案内所の改修(3)市民や観光客の推薦で“もてなし度”の高い店などを表彰するコンクールの実施−など、まち挙げての意識醸成や基盤づくりのためのさまざまな事業に着手した。

 昨年7月には観光協会の主導で、市民公募による観光ボランティアガイド「宮古もてなし隊」も始動。隊長の西村義松さん(67)ら10人が週末ごとにフル回転した。

 宣言以降、ここ1、2年の接遇研修会(観光協会主催)には200−300人規模の参加者があり、商店街でもすし店10店が共通の特別メニューの提供を始めるなど、徐々に意識の変化が見られるという。

 ただ、「関連業界はともかく、一般商店や市民レベルでの浸透はまだまだ」(山口惣一観光協会事務局長)との見方。一朝一夕にはいかない現実と向き合いながら、いかに実践・発信を重ねていくか。宣言の具現化へはこれからが正念場と感じた。

 こうした取り組みと併せ、市は現在、新たな観光交流拠点として宮古湾に面した出崎地区の整備を進めている。昨年11月には東北2番目のタラソテラピー(海洋療法)施設などを備えた「シートピアなあど」(運営・宮古地区産業振興公社)がオープン。今後、浄土ケ浜地区との連動を図りつつ、課題とする滞在型・通年型観光への脱却を目指す考えだ。

◆◇−−−−◇◆

不便は承知の上

 滞在中、浄土ケ浜へと2度、足を運び、観光協会も入居するレストハウスの2階テラスから冬の絶景に見入った。波静かで穏やかな入り江の景観を望み、そして市役所での佐藤課長の話を思い起こした。

 「“スロー”と言われれば、わがまちの底流にもそうした資質があると思う。観光客も(交通アクセスなど)多少の不便は承知の上で足を運んでくれる。だからこそ、もてなしの心がより大切になってくるんです」。観光都市・宮古の再生への挑戦が続く。(金谷信)(04.1.6)

<宮古もてなしプラン>「もてなし交流観光都市」宣言の目的を具現化するため、2000年度から事業を開始。ホスピタリティー向上のための「おおきにプロジェクト」(読本作製など)と、観光関連の基盤整備を促進する「おでんせ(“おいでください”の意)プロジェクト」(情報提供、公共施設のバリアフリー化など)の2つに体系付けている。

|4|index


HOME