年間キャンペーン第4部

カリスマの視点
道内キーマンに聞く

籔半社長(小樽市) 小川原 格氏


「当たり前」の再発見を
人間交流が地域を宣伝




本物求める個人観光

 バスで小樽運河に着き、記念写真を撮り、お土産を買わせて札幌のススキノに移動する。そんな2時間程度の観光にはとっくに陰りが出ている。

 若者も熟年世代も、今では圧倒的にパーソナルツーリズム(個人観光)が主流だ。訪問先の情報を事前にインターネットで調べ、計画を立てて訪れる。安物の土産物観光には目も向けない。見るものにも、食べるものにも本物を求めている。


「地域の“当たり前”を再発見すべきだ」と強調する小川原氏


情報誌で紹介
一躍人気商品


 「岩内のタチカマ」をご存じだろうか。スケトウダラの白子を塩とでんぷんで練り上げ、ゆでたもので、日本海沿岸の冬の保存食として作られ続けた。情報誌で紹介されると、生産が追いつかないほどの人気商品になった。

 そのまちの人が「あって当たり前」と思うものでも、外から見れば「素晴らしい」ものが各地にたくさん転がっている。小樽運河も同じだ。地元の人は「運河は臭く役割も終わった。埋めて道路にしてしまえ」と思った。だが、よそから来た人は「なぜこんなに美しい景色、風景を道路にしてしまうのか」という。

 それまでマイナスとしか評価されていなかったものが、違う視点、角度でみると光り輝く。まちの「当たり前」をもっともっと再発見する。「何だ、これは」と感動することが大切だ。

 まちを面白がること、面白いものを面白いと思う感性を抜きにして「スロー」は成立しない。格好だけになってしまう。

 そもそも観光とは、国の光を見ることだ。光は土産物でない。土地の歴史、風土、人、景色、物産を指す。観光客の数に一喜一憂しても始まらない。どういう客がこの地域に来てくれるのか。客がなぜ、この地域を気に入っているかを考えることが大事だ。

農場観光は「人間観光」

 ファームツーリズム(農場観光)の「ファーム」を農業と思うのは間違いだ。ファームの主人がすべてであり、人間的な魅力、農業に携わる思いなどを農場に滞在する若者らに伝えることが観光だ。農業観光ではなく「人間観光」。訪れる人は農家の生きざまを見たい。農作業をしたいだけではない。

 十勝でもそう。人間交流を深めることが十勝の素晴らしさを宣伝することになり、「十勝に住みたい」と農村滞在者に思わせることにつながる。交流観光によって、農家も若者の新しい考え方や視点を吸収できる。農場観光を通じて十勝の応援団、ファンをたくさんつくるべきだ。農家に滞在した人は絶対、十勝のものを買おうと思う。地場の基幹産業に貢献しない観光など意味がない。

 1次産業×2次産業×3次産業のイコールが観光産業であり、それを「6次産業」といっている。観光は地域づくりの切り口にすぎない。(聞き手・深田隆弘)(04.10.18)

おがわら・ただし 1948年、小樽市生まれ。芝浦工業大学建築工学科中退。74年に帰省し、そば店の籔半(やぶはん)に入社。小樽運河など歴史的建造物の保存をてこに、斜陽経済を活気づける運動に参画。運河沿いの祭典「ポートフェスティバル」の開催や、観光客同士が情報を書き込む小樽、後志の各ウェブページ立ち上げで中心的役割を果たす。56歳。

◇−−◆−−◇

 観光地としての魅力を高め、地域振興を成功に導いた先達として、国は全国で100人の「観光カリスマ」の選定作業を進めている。年間キャンペーン第4部では、既に認定された道内6人のキーマンに、それぞれの実践や方策、十勝観光への提言などを聞く。

|4-1|4-24-34-44-54-6index


HOME