ゆとりへの旅路
全国活性化ルポ

新潟県安塚町


町民主役で雪を資源に
魅力再発見次々と成果

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発想転換で活性化

 「世界中どこでも負の自然条件はある。それをプラスとみる発想の転換が、まちの活性化につながった」

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 平地で2メートル、山間部で4メートルの雪が積もる新潟県南西部の豪雪地帯。人口わずか3700人余りという小さなまちに、年間約50万人もの観光客が訪れる。「重荷」だった雪を「資源」として最大限に生かす−。国土交通省の「観光カリスマ」にも認定された矢野学町長の言葉には、そんなまちづくりの理念が込められていた。

 大きな転機となったのが、1987年に町が主催した「サヨナラ後楽園球場スノーフェスティバル」。同球場に地元からダンプ450台分の雪を運び込み、雪国の魅力をPR。全国的なマスコミ報道、超満員となった会場が、過疎の進む町の住民に大きな自信を芽生えさせた。

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毎年2月末に行われる「スノーフェスティバル」。町民がそれぞれの発想で計5万本のキャンドルを飾り、集落の茶屋で客をもてなす(安塚町役場提供)

財団で研究・発信

 当時、町の総務課長としてフェスを運営した矢野町長はさらに数々の手を打つ。町長に就任すると「雪国文化村構想」を掲げ、雪を楽しむ暮らしを研究・情報発信する「雪だるま財団」を90年に設立。同年には誘致したスキー場「キューピットバレイ」、92年には「ゆきだるま温泉」をオープンさせ、雪を利用した観光を展開した。

 同スキー場では冬期間に約100人の町民が働く。「大盛りにしとくよ」と、レストランのおばちゃんが人なつこい笑顔を見せる。インターネット「ヤフー」のスキー場評価で、昨年度は全国1位に。同スキー場の白倉敏一専務は「お客様をまち全体で受け入れようという姿勢が評価されている」と力を込める。

 「交流人口が増えたことで町民の意識が変わり、もてなしの心が生まれた」と町ふれあい交流課の丸田健一郎さん(36)。農家自身が産物を販売する「ゆきだるま物産館」には、自家製コシヒカリや日本酒、雪中貯蔵された野菜などが並ぶ。「自然王国ほその村」は集落で交流事業に取り組み、田舎の良さをアピール。廃校を利用した宿泊施設やアートスペースなどもある。

 毎年2月末の「スノーフェスティバル」では住民全員が“雪壁”などに穴を掘り、キャンドルを飾る。まちを幻想的に彩る約5万本のキャンドルロード、住民による「1軒1個」の雪像、郷土料理でもてなす茶屋などにリピーターも多い。

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夏場に体験型観光

 「夏場の魅力も引き出そう」と体験型観光にも取り組む。98年には安塚町など東頸城(ひがしくびき)郡6町村で「越後田舎体験事業」がスタート。田植えや新潟名物の笹もち作り、町民宅での「民泊」などを、今年度は全国の小・中・高46校の生徒が体験した。

 同事業で子供たちを受け入れる民宿「さわ」の吉田良一さん(62)は「生活体験の裏付けがあるから、説得力がある」と話す。これも眠っている資源を掘り起こした成果だった。

 さまざまな行政のアイデア、盛り上げに住民が賛同。まちの魅力を再発見し、次々と成果が生まれた。2005年1月1日には、安塚町を含む14市町村が合併し「上越市」となる予定。“やすづかブランド”は消えても、雪深い田舎町で花を咲かせた「町民主役」のまちづくりの思いは消えることはない。(松村智裕)(04.1.5)

<雪国文化村構想>「雪と緑と人を活(い)かした全町公園」をコンセプトに、まちの自然、文化、人的資源を掘り起こし、雪国らしい生活の在り方を見いだす構想。安塚町は町内5施設で「雪冷房」を採用する雪エネルギー活用の先進地。高床式の「克雪住宅」、「雪貯蔵」などを研究するほか、雪国文化圏シンポジウムなども開催している。

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