年間キャンペーン第3部

十勝に吹く風
質と豊かさの実践

陸  別


町民に育つ「もてなしの心」
WRCで真価発揮


 張り詰めた緊張感から一転、各車が爆音とともに砂煙を巻き上げて疾走する―。「オフロードのまち」陸別で、5月に開かれた4輪車レース「オフロードバトル」(陸別町主催)。観客の中には、管内外からのモータースポーツファンとともに小さな子供や家族連れ、お年寄りの姿もあった。

■身近なレース


アジア・パシフィックラリーでは、町民有志が手作りのボードを選手たちに掲げ、心温まるメッセージを送った(昨年9月、陸別町内)

 「行政でサーキットコースを保有しているのは全国で陸別だけ。町民にはレースが非常に身近なので、足を運びやすい雰囲気なのでしょう」と町観光協会の尾崎光弘会長(65)は胸を張る。

 同町の「モータースポーツ」の芽生えは1979年。尾崎会長に、バギーレースをやっていた帯広の知人が「陸別でレースをやりたい」と持ち掛けたのが最初だった。

 尾崎会長ら車好きが集まり、「オートスポーツ陸別」(現会長は阿部勉さん)を同年に結成、牧場を開放し初のレースを展開した。道内から約30台、観客約300人が参集。当時は真冬の名物イベント「しばれフェスティバル」の誕生前で、「あのにぎやかさはとても印象に残っている」と尾崎会長は振り返る。

■町の観光資源

 その後、町が86年、町有地に陸別サーキットを造成。町がハード面を支援し、オートスポーツ陸別を中心に大会運営を担う体制が確立された。年2回のオフロードレースは徐々に規模を拡大、現在は1000人から2000人のギャラリーが大挙する町の観光資源の1つにもなっている。

 「町民が『自分たちがまず楽しみ、来た人も楽しませる』という意識だから、選手や来場者も喜ぶよう」と町産業振興課の今村保広主任主査。自分たちのスタイルを貫き、レース後にはファンや選手のために交流会を開くなど、もてなしの心(ホスピタリティー)も自然と身に付いた。

 この9月3日にはWRC(世界ラリー選手権)第11戦「ラリー・ジャパン2004」が同町などで開幕する。人口約3300人のまちを世界規模の大会の舞台にするため、町民挙げて誘致に取り組んできた。町内で旅館を営むラリージャパン支援・歓迎実行委員会運営委員長の浜田始さん(54)は「話せなくても笑顔で『ハロー!』と出迎えたい。町始まって以来の混雑となるだろうが、今回の対応で好印象を残すことが陸別に人を呼び込むカギになる」と強調する。

■勝手連でPR

 勝手連的に町民も独自のPRを展開。食堂「森田屋」(陸別東1ノ1)ではラリー期間限定で「ラリーセット」を提供する。すべて道産の素材を使った豚丼とそばの定食だ。店主の後藤和美さん(36)は「WRCに向け、地図を頭にたたき込んだり、専門用語を勉強するなど各店でいい雰囲気をつくる努力をしている」と意気込む。

 昨秋、陸別などで開かれたアジア・パシフィックラリーでは、町民有志が「世界の走りをありがとう!」など手書きのボードを掲げ、選手たちを見送った。町民の優しさがにじみ、ドライバーにも好評を得た。

 「ラリーのほかに、自然が豊富な十勝を直接感じてほしい。ラリー以外でも、陸別や十勝に来てもらえるようアピールしていきたい」と浜田さん。長年のレースイベント開催で醸成された大会運営能力と温かみのあるもてなしが、十勝の観光振興に一役買う。
(松村智裕・おわり)(04.08.03)

<オフロードレース>しばれフェス、パッチ選手権と並ぶ陸別町の3大イベントの1つ。道内最大のオフロードコース・陸別サーキットで、毎年5月に「オフロードバトル」、8月に「全日本選手権」が開かれる。バギーカーと4輪モトクロスが斜度30度の上り坂やヘアピンなどを疾走する。

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