年間キャンペーン第3部

十勝に吹く風
質と豊かさの実践

新  得


農業と連携、充実の体験型
尊重する客の意思


 「バスで観光地や土産物店に直行するなら、原宿を歩いた方がまし。かといって、自分たちだけで自然に足を踏み入れるのも危険。地元の人がちょっと案内してくれるのがありがたい」

 新得町屈足の「十勝アウトドアメイツ」(略称TOM、高橋正記代表)が、今年から夏休み期間限定で始めた「秘滝!川狩り河童(かっぱ)ツアー」。参加者第1号で、さいたま市から家族3人で訪れた粕谷由紀子さん(47)は納得の表情でそう話す。

■過ごし方それぞれ


夏休み限定で始まったTOMの川狩りツアー。両親が魚釣りや自然観察に興じる間、子供はガイドの手助けでゴムボートで遊ぶ

 ツアー参加者は近くの十勝川支流で、魚を釣り、飽きたらボートに乗って滝つぼに入る。河原に体を横たえ、川岸から自然を眺める。“川狩り”の名の通り、過ごし方は人それぞれだ。

 5年前、町内の林業関連企業がTOMを立ち上げ、以来、ボートでの川下り「ラフティング」を主に体験型観光を提供してきた。しかし、道内各地で同様のメニューが競合。「幅広い年齢層がゆったりと川を楽しめれば」(高橋代表)と同ツアーを企画した。

 近くで民宿を営み、TOMの送迎車運転も買って出る鈴木軍治さん(59)も「手取り足取りの時代じゃない。客が好きなことを楽しむことで、遊びの幅も広がる。受け入れ側はつかず離れずのところで見ているのがいい」と同調する。

■目立つ個人客

 屈足にはもう1つのアウトドア会社「とかちアドベンチャークラブ」(略称TAC、山田英和社長)がある。ボートで十勝川を下り、「ファンカヤック」と呼ばれる乗り物で屈足湖を巡るツアーなどを展開。管内外から年間3000人ほどが訪れ、レンタカーなどで移動する個人客が目立つという。

 新得町には年間約13万人の宿泊客があり、「うち2、3割が川下りなどの屋外活動を楽しむ」(町商工観光課)。狩勝峠や十勝川上流、東大雪など自然環境に恵まれ、町内の民間体験施設も農家民宿や登山、乗馬など「管内で最も多い」(同)22軒に増えた。

 同課の貴戸延之課長は「『新得だからできる』との発想で、各事業者とも頑張っている。今や新得観光はアウトドアなしでは語れない」と力を込める。

 “体験のメッカ”新得に、さらに厚みを加える動きは活発だ。TACが今春開発したパック商品もその1つ。町内や近隣の農家民宿、観光農園と提携、川下りの残り半日をゆったりと過ごしてもらう試みだ。

■十勝の遊び方提案

 同社のチーフガイド野村竜介さん(32)は「ラフティングで屈足を訪れる客も、体験が終われば管外に移動する例が多かった。長い時間滞在してもらえば、もっと十勝の良さが伝わりやすい。これは管外客らに対する十勝での遊び方の提案でもある」と話す。

 ほかにも、農家らでつくる「新得農村ホリデー研究会」(広瀬隆之会長)が地道に活動を続けている。地元の体験施設を一元的に紹介するパンフレットを毎年作り、今年はウェブサイトも立ち上げた。

 自然、農業など地域の“本物”と向き合い、連携を軸に、着実に広がる体験型の観光づくり。貴戸課長は「新得にはまだまだ未利用の素材がある。提携が進めば、提供できるメニューもさらに充実するはず」と期待をにじませた。(深田隆弘)(04.08.02)

<新得農村ホリデー研究会>農村観光や農家滞在に関心のある農家ら十数人で1991年ごろ発足。町内の各体験施設を案内する標識作りなどにも取り組む。現在の会員数は、TOM、TACを含む32団体・個人。

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