年間キャンペーン第2部

恵みの大地
地域の資産を考える

温泉王国


身近な資源、根強い人気
情報発信の積極化必要


◆◇−−−−◇◆
天然の魅力

 「うちにはシャワーもジャグジーもサウナも何もない。ただ温泉につかるだけ。本当に温泉好きな人以外は、あまり楽しくない所かもしれませんね」

 帯広市から車で約2時間。雌阿寒岳(標高1499メートル)のふもと、足寄町雌阿寒温泉にある「野中温泉別館」代表の野中祐子さん(30)はそう話す。

 内湯と露天風呂があり、背後に雌阿寒岳が迫る。泉質(硫化水素泉)などに大きな特徴があるわけではないが、100%源泉という“天然”の魅力に、周囲の自然環境も相まって温泉ファンを引き寄せる。常連客を中心に年間約6000人が泊まり、日帰り客も数千人いるという。

 浴室には近くのトドマツを使用。父の信郎さん(故人)が選び、生前は「なでるほど」愛着を持った。のんびりした雰囲気、深い静寂が辺りを包む。

 料理は地場の山菜を中心とした手作り。舟盛りなど温泉ホテルで味わう料理は出ないし、両手を畳につける女将のあいさつもない。「魅力など考えたことはないが、木造浴場のひなびた雰囲気が好きというお客さんもいる。思いは人それぞれなのでしょう」と野中さん。網走管内津別町から訪れた男性(51)も「何でもそろっているより、多少不自由のある方がいい」と話した。

 音更町の十勝川温泉には、ドイツのバーデンバーデン市と並び、世界で2カ所という植物性(モール)温泉がある。樹木が堆積(たいせき)した亜炭層などを通るため、植物成分を多く含む。茶褐色の湯は皮膚を刺激しない。天然保湿成分を多く含み、入浴後、肌がすべすべになる。「美人の湯」とうたう理由もここにある。

 道温泉協会などの調べによると、入湯者が支払う入湯税額で音更町は全道8位、全国65位(572市町村中、2002年度)。別な温泉人気調査でも上位を占め、同年度、十勝川温泉には49万人が宿泊した。

足寄町雌阿寒温泉にある野中温泉別館。入浴客らが温泉天国・十勝の恵みを楽しむ

 

◆◇−−−−◇◆

ホタルを育てる

 地元の旅館組合が十勝川温泉観光協会などと取り組む“ホタルの里づくり”プロジェクトも、温泉資源を活用した取り組みの1つ。ホタルをモール温泉(廃泉活用)の流れるせせらぎで育て、6−8月に700匹ほどが観賞できる見込み。不況などを背景に1996年(68万5000人)以降、宿泊客が減少を続ける中、新たな観光資源として関係者の期待は大きく、同温泉旅館協同組合の山本博専務理事は「ホタルが育つ温泉は日本でここしかない。育つ自然環境がここにはある」と自信を込める。

 モール温泉はミネラル分を多く含むなど、ホタルが生育できるいい環境という。無限ではない温泉資源の有効活用として、全国でも先進的な取り組みとなる。

 管内のほぼすべての温泉を訪ねるなど、十勝の事情に詳しい上士幌町産業課主査の関克身さん(39)は「住む人は気付きづらいかもしれないが、十勝は温泉王国。帯広市内外に散在、温泉を使う銭湯もある。いわゆる温泉地は別として、これほど身近な都市は珍しいのでは」と“湯”を前面にした情報発信の必要性を強調する。

 「温泉は有史以来、われわれと切っても切れないもの。団塊の世代も、退職すれば大型遊園地ではなく、昔ながらの温泉に戻る。温泉は強い」(おわり・深田隆弘)(04.4.15)
 

2-12-22-32-42-5|2-6|index


HOME