年間キャンペーン第2部

恵みの大地
地域の資産を考える

潤いの古建築


魅力的な建造物が点在
“本物”見据え共通認識を


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大正期の面影

 「年配の方ならともかく、若い世代でも、店を見て“懐かしい”と言う人が多々いる。その時代を生きていたわけではないけれど、何かしら、かき立てられるものがあるのでしょう。不思議な現象ですよね」

 帯広市東1南5の電信通に面したカレー店「カ釐(カリー)屋東印度會社」。大正期の面影をそのままに残す店内で、店主の村井克彦さん(39)がそう話す。

 1913年(大正2年)に建築された「岩野商店」(岩野惇子さん所有)の1階を借り受け、2002年1月にオープンした。今では数少なくなった土蔵造りの建物の再活用。古い民家の再生にライフワークとして取り組み、開店に際し、その修復も手掛けた市内の建築家加藤義隆さん(44)は「昔の木の持つパワーと、そこに詰め込まれた職人の技。建物自体を大きく変えることなく、それを見せたいと考えた」と説明する。

 客層は地元に住む若い世代が中心。昨年、全国的な旅行雑誌で紹介されたのがきっかけで、年配の夫婦ら観光客も少しずつだが来店するようになったという。

 

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土蔵造りの建物を再生し、通りに潤いを与えるカ釐屋東印度會社。最近は観光客も姿を見せる(金野和彦撮影)

「資源」の認識薄く

 観光地、とりわけタウンツーリズム(街なか観光)を魅力付ける1つに街並みがあり、地域の歴史的な建造物が奥行きを与えている例は多い。帯広市内にも、明治から大正、昭和初期にかけて建てられ、まちの歴史や産業、生活などを今に語り継ぐ“古建築”が点在する。

 例えば中心部では、双葉幼稚園(東4南10)や旧安田銀行帯広支店(十勝信組、大通南9)、宮本商産(西2南5)、三井金物店(相原求一朗デッサン館、大通南5)など。足を延ばせば、真正閣(稲田町東2線6)や市指定文化財の十勝監獄石油庫(緑ケ丘公園内)などもあり、単調とされる帯広の街並みに潤いを与えている。

 ただ、こうした建造物が“群”として残る函館などとは異なり、帯広では数も少なく“点”としての存在でしかない。人を引きつける“磁力”を持ちながら、これらが地域固有の「資源」との認識も共有されづらいのが現状だ。

 道建築士会十勝支部帯広分会と市教委が1983年から実施してきた市内の古建築調査に、当初からかかわってきた小野寺一彦さん(46)=同支部理事=は「時代を担ってきた人なり、企業なりの建物は何年たっても魅力的。まちとしての歴史は確かに浅いが、そこにある“本物”をきちんと見据えてほしい」と訴える。


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近代の遺産に関心

 寒さなどの生活上の問題、跡地利用といった所有者それぞれの事情もあり、歴史的価値を指摘されながら姿を消した建物は少なくない。しかし一方では、それを慈しみ、必死に守り続けてきた人たちもいる。

 上士幌町の旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋や、海岸線に残るトーチカ群(戦時中の防衛陣地)など、十勝でも近代の建造物遺産に関心が集まっている。小野寺さんは言う。「古建築でいえば、建築を文化としてとらえられるかどうかが、残せるかどうかの境目と思う。そこに住む人がまちを愛せなければ、訪れる人も愛せない。それが熟したとき、古建築も確実に観光資源の1つになっていく」と。(金谷信)(04.4.12)

カ釐(カリー)屋東印度會社の「カ」の字は異体字のためカタカナ表記させて頂きました。

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