年間キャンペーン第2部

恵みの大地
地域の資産を考える

あるがままの自然


寒さ、静寂も格好の素材に
都市住民を引きつける


 大雪山国立公園内の上士幌町十勝三股は、まだ一面銀世界に包まれ、小雪が舞っていた。

 今月初め、夜明けとともに糠平温泉を出発した一行が三股に到着したのは午前6時すぎ。「だれも足を踏み入れていない真っ白な雪原を歩けるなんて…」。関西から来た若い女性3人組は雪の上に大の字になってはしゃぎ、シラカバ林のそばで飲むコーヒーの味に感動した。
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寂しい印象一変

シラカバ林のそばでコーヒーを味わう早朝ネイチャーウオッチングの一行


 糠平温泉に拠点を構えるNPOひがし大雪自然ガイドセンター(河田充代表)が「早朝ネイチャーウオッチング」を始めて13年。参加者は団体バスツアーの観光客が中心で、糠平に宿泊後、バスが次の目的地に出発する前の早朝の時間帯に実施している。

 約20キロ離れた十勝三股まで車で案内し、現地を徒歩で散策。自然案内人の語りとともに、動植物など自然との触れ合いを約1時間にわたって楽しむ。昨年は年間280日開催。ここ数年、参加者は年間6500人ほどで推移し、糠平観光の目玉の1つに成長した。

 「夕方に糠平に入り、朝9時までに出発してしまうのでは温泉しか楽しむものがない。プラス何かの思い出をつくってもらい、地域を印象付けようと考えた」と河田代表。当初、冬は実施していなかったが、スキー場の入り込み低迷などもあり、3年前から通年開催するようになったという。

 「寂しいイメージがあったが、こんなにも自然が生きているのだと実感した」と奈良県から来た女性は感激。横浜からの年配夫婦は「北海道に来たのだから寒さを体験したかった」と早起きの理由を話した。原風景を求めながら、ツアーで訪れるのは人の手が入った有名観光地ばかり。何もない三股の風景や、氷点下20度にもなる寒さは観光客の期待を満たす格好の素材となっている。

 帯広開発建設部が昨年開設した観光情報ホームページ「のんのんとかち」で実施したウェブアンケートによると、十勝を訪れるとしたら何をしたいかの問いに、30都道府県の300人のうち23・7%が「自然を満喫」と回答。「おいしい料理」「温泉」と並んで高い関心を示した。アウトドアスポーツなどを楽しみたいとの希望もあったが、多くは純粋に十勝の風土を味わいたいという声だった。
 
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十勝の風土が資源

 そんなアンケート結果を裏付けるように、鹿追町の然別湖ネイチャーセンター(坂本昌彦社長)が同じく通年で実施している「ナイトウオッチング」も好評だ。

 懐中電灯などの明かりは一切使わない。冬は月明かりが幻想的な雪の湖面を歩く。「星空を目当てに参加する人が多いのですが、参加してみると“静けさ”に感動する人が多い」(同センター)という。

 生活の営みから、夜も光あふれる都市の住人にとって、静寂の闇夜は未知の世界。暗闇の森に目を凝らし、耳を澄ますと、森の中でうごめく動物たちの気配やフクロウの鳴き声が聞こえてくる。

 「来るたびに違う表情を求めるリピーターも多い」(同)という。十勝に住む人にとって当たり前の自然が、都会の人間を引きつける貴重な資源となっている。 (古川雄介)(04.04.10)


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