年間キャンペーン第2部

恵みの大地
地域の資産を考える

大いなる景観


高評価の農村風景も資源
脇役を主役に 関係者が検討


 「十勝平野から眺める日高山脈の景色はとても魅力的。日高側からみた山脈は木々が生い茂る穏やかな山並みだが、十勝側はそれと違い、切り立っている急斜面だから特にきれい」

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薄い地元の関心

 日高山脈のふもと、中札内村南札内の日高山脈山岳センターに勤務する槇正廣さん(社会教育指導員)は、年間300人を超える登山客への情報提供が主な仕事。村の市街地からセンターへの通勤途中で毎日、日高山脈を眺め、四季折々の表情を知る。

 「本州や札幌から訪れる登山客は山登りだけでなく、景色にもひかれ感動する。でも、十勝の住民はちょっと違う。普段から見慣れているせいか、関心が向けられていない気がする。十勝らしい魅力的な景色と思うが…」。槇さんは残念そうに、そうつぶやく。

 十勝の景観は、十勝支庁が札幌圏の観光業者を対象に昨年実施した実態調査でも高い評価を得ている。回答企業18社の7割に当たる13社が「最も北海道らしい雄大な農村景観」と分析。日高山脈はその象徴ともいえる存在の1つだ。別の実態調査では、十勝の景観イメージとして「土地の広大さ」「酪農景観」「防風林」などとともに代表格に挙がった。
 

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日高山脈を背景に広がる防風林。十勝の農村景観を象徴する観光資源として期待が高まる(芽室町北伏古で、山下僚撮影)

事業連動に課題

 しかし、関係者の間では「地元で観光資源として期待されても、それが実際の観光事業としてあまり結び付いていないのが現状」(大澤政昭十勝支庁商工労働観光課長)との指摘もある。

 中札内村観光協会の作田正昭事務局長も「山脈がきれいに見えるスポットは、電線や看板が視界に入らない町外れの農道沿い。バスに乗って案内する場合でも停留スペースがない。農道といえども、交通量が多いから危なくて道路に降りられない」と打ち明ける。

 同村には年間14万人の観光客が訪れる。近年は中札内美術村や花畑牧場など、観光スポットの集客効果から観光客が増加しているが、「多くは主なスポットを見て帰ってしまう」(作田事務局長)という。

 作田事務局長は「村の観光課題は、観光客に可能な限り(村内に)長く滞在してもらうこと。日高山脈の景色は、のんびりと田舎の雰囲気を楽しんで滞在してもらうには絶好な存在。それだけに惜しい」と残念がる。

 防風林も十勝らしい観光資源の1つだ。「特に、秋口にカラマツが黄色く変化すると美しい。農業を風害から守る先人の知恵でもあり、何とか残して観光に活用したい」と、十勝支庁の守實(もりざね)善信林務課主幹は期待を寄せる。

 同支庁によると、防風林は畑作農業の規模拡大に伴い、1990年に帯広など8市町村で延べ約2400キロだったが、2003年には約2100キロまで減った。支庁では04年度から2カ年かけて実態を調べ、農村景観資源として防風林を維持したい考えだ。

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防風林に存在感

 守實主幹はこう強調する。「十勝の防風林は背景に山脈や広い平野があるから、道内他地域の防風林より存在感がある。ただ、どの場所に行くとよく見えるのか把握されていない。背景とうまくマッチして防風林がよく見える観光スポットを探し、地図に起こせるか検討したい」。何げなく見過ごされてきた十勝観光の脇役に、徐々に光が当てられる。(児玉匡史)(04.4.9)

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 四季折々の景観や大自然、温泉、味覚など、十勝には地域として本来備えている魅力的な資源がある。住民が日々当たり前のように受け入れているものが、実は固有の観光資産としての可能性を秘め、それをいかに生かしていくかが問われる時代になった。年間キャンペーン「再生 とかち観光」の第2部では、十勝観光の持つ“潜在力”に焦点を当てる。

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