農業の新たな挑戦
全国先進地ルポ

新潟県加茂市農業総合研究所食品研究センター


「農」プラス「加工」
米粉開発で消費拡大へ
食料自給率の向上にも一役

 「ライフスタイルが大きく変わり気軽に食べられる米の加工品が市場で求められていた。同時に、これからの加工技術は低コストの輸入品に対抗できなければならない」。米を小麦粉と同じような微細な粉にする加工技術を開発した新潟県立の農業総合研究所食品研究センター(加茂市)の江川和徳穀類食品科長(57)は、研究の目的についてこう語った。

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30種類以上の米粉パンが並ぶアンテナショップ「米ワールド21桜木店」と高橋さん

パンやめんにも

 かわらぶきの屋根が密集する住宅街の中にセンターは建つ。試験室はビーカーなどの試験道具や調理器具、センサーが付いた精密機器が並び、職員は農産物の分析などの作業を黙々とこなしている。パンやめんにも加工できる米の新たな用途は、この一室で1991年に開発された。米を「粉」に加工して食べるという発想の転換は、厳しい生産環境にある米の消費拡大に可能性を広げる。

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“伝道師”全国へ

 しかし、開発当初、この技術を導入した製粉所は県内に1カ所しかなかった。普及の立役者となったのは、新潟市で地域振興コンサルタントを手掛ける高橋仙一郎さん(58)。「県が数年前、新潟米の評価を高めるため、米を選別するふるい目を1・7ミリ以上から1・85ミリ以上に変えた結果、小粒のくず米が増えた。くず米の活用を考えなければ農家の収入が減り、後継者不足に拍車を掛けてしまう。粉への加工は、水田を守ることにもつながる」と鋭いまなざしで普及活動を始めたきっかけを話した。

 高橋さんは、94年から同センターや製粉業者、米生産者などとプロジェクトを進め、96年農水省の補助を受け任意団体を発足。これが微細米粉の販売戦略を担う協同組合「米(まい)ワールド21普及協議会」(新潟市)の設立へと結びついた。高橋さんは現在同協議会の専務理事。全国に問屋ネットワークを構築する一方、米粉の“伝道師”となってパンづくり講習会などで全国を駆け回っている。
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 一方、同県黒川村が98年に国・県の助成を受けて米粉処理加工施設を建設したことで、微細米粉の安定的な出荷体制が整った。翌年に同村は小・中学校の給食メニューに米粉パンを加えた。県も昨年11月から9市町村33校で試験的に米粉パンを出した。2003年度はさらに拡大する方向だ。

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帯広にも販売店

 普及の勢いは今や全国レベル。食糧庁が各都道府県に給食への米粉パン導入を呼び掛け、群馬県太田市は今年度から、鳥取市は来年度から給食に出すため準備を進めている。道内でも米粉シンポジウムが11月に岩見沢市で開かれ、帯広市内のコルバ(西3南5)でも販売している。高橋さんは「この事業を普及させることで米の生産調整を緩和から廃止、そして食料自給率の向上へとつなげることができる」と力を込めた。

 新しい技術を販売に結びつけた原動力は、戦略に基づく組織作りと行動にあった。エネルギッシュな高橋さんの話しぶりに、米粉普及の勢いを感じた。 (平田幸嗣)(おわり)(03.1.8)

<メモ>米の内部は堅い細胞壁で構成され、そのまま破砕するとガラス玉を割ったように角張り、大きさや形がふぞろいの粒になるが、微細米粉は酵素(ペクチナーゼ)で細胞壁を柔らかくした後に破砕し、小麦粉のように丸みを帯びたほぼ均一な粒にする。パンに使う米粉には、微細米粉85%とつなぎにするため小麦粉に含まれるたんぱく質グルテンを15%混ぜている。

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