新エネルギー創出 

十勝発の技術世界に発信
BGプラント有効な方策
帯広畜産大学教授 高橋潤一氏

 環境問題が叫ばれる中、地球に優しい持続的農業の確立が迫られている。地下水・土壌汚染などにつながる家畜ふん尿、牛の呼気中に含まれて温室効果を招くメタンガスなど未利用の農畜産業排出物を生かした新エネルギー創出について、農業王国・十勝から世界に向けた技術発信を目指す帯広畜産大学畜産科学科の高橋潤一教授(55)に聞いた。(岩城由彦)

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モンゴルでも検討

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帯広畜産大学教授 高橋潤一氏
<プロフィル>1948年福岡市生まれ。帯畜大酪農学科卒。九州大学大学院を経て、77年に帯畜大へ。98年に教授。専門は家畜栄養学、栄養生理化学。JICA専門家として南米各国を訪れたほか、カナダ・アルバータ大学の客員研究員などを歴任。

 −農畜産業を出発点とした生物由来の新エネルギー利用の現状は。

 バイオガス(BG)プラントは家畜ふん尿処理、エネルギー再利用の有効な方策。特に、寒冷地に適応する高温型の施設は発酵が早く効率的だ。発酵消化液の臭気も少なく、殺菌効果も高い。固体と液体の分離に優れ、廃棄処理しやすいのも特徴だ。帯広畜産大学では国際協力案件として、厳寒期は氷点下50度まで気温が下がるモンゴルでの実用化も検討している。しかし、消化液は無機体の窒素化合物(アンモニア)で、硝酸態窒素となって水中に過剰に取り込まれると、赤潮や湖沼の富栄養化を招く。BGプラントは発生する窒素のリサイクルまで気を配っていないのが現実。過剰にまけば環境汚染につながる消化液をどう処理するか。液肥としてまく以外、アンモニア燃料電池として活用する画期的な考え方も注目されている。

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メタンガス生成

 −このほか、研究が進んでいる技術はあるか。

 有機性廃棄物のほか、二酸化炭素から直接エネルギーとしてのメタンガスを生成する方法も考えられる。発酵槽内の電位制御によってメタンガス生成菌を活性化するもので、帯畜大では現在、プロジェクトを組織し民間と協力して研究を進めている。二酸化炭素からメタンを生成する仕組みは、自然界では牛のルーメン(第1胃)の中で恒常的に行われている。地球温暖化を促進する二酸化炭素の処理については、深海注入も注目されているが、メタンに変えることができれば画期的で、化石燃料の使用量を減らすことにもつながる。

 −資源循環に関する有望な技術は。

 BSE(牛海綿状脳症)未検査の廃用牛などから製造した肉骨粉を、付加価値の高い炭化物にする方法が考えられる。リンを揮散性の物質として放散させずに炭化すれば、土壌改良剤としての施肥効果が生まれる。活性炭のような吸着剤としての効果も発現させることができる。

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プリオン除去課題

 −こうした技術の実用化で、農畜産業の現場が解決すべき課題は。

 現在、家畜ふん尿は農家が個別処理しているが、まずは一元的に収集するシステムづくりが必要だ。また、肉骨粉の製造過程ではライン洗浄などで大量の水を使う。BSEの原因となるプリオンはたんぱく質で水に溶け、排水中に混入する可能性がある。これをどう除去するかも課題だ。

 −十勝で技術を確立し、世界に発信できる可能性は。

 技術の研究・開発はもちろんだが、農畜産業の循環の中に溶け込ませようという発想は十勝でなければ思いつかない。帯畜大は国内外の大学や試験研究機関との連携にも積極的で、地域のためになった技術を世界に発信する重要な役割を担えると確信している。(03.12.12)

<バイオガスプラント>有機系廃棄物を混ぜた家畜ふん尿を一定温度で撹拌(かくはん)・発酵し、発生したバイオガスからガス発電機などで電力と熱を回収する。残液は殺菌処理後、速効性の有機肥料として生かす。十勝では予定を含め、11基が整備される。

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