農業生産法人 

「家業」から「地域企業」へ
雇用確保と活性化図る
神内ファーム21常務 中村 真氏

 農業後継者の減少に伴って十勝管内の1戸当たり耕地面積は30ヘクタールを突破、一部では既に50ヘクタールを上回っている。一方、農業者人口は減り続け、家族経営だけで適正輪作を守った地域農業を維持することは困難な状況が想定される。企業化による農地継承を模索する農業生産法人・有限会社神内ファーム21の中村真常務取締役(52)に聞いた。(広田実)

□□−−−−−□□

魅力ある産業に

phot

神内ファーム21常務 中村 真氏
<プロフィル>1951年山口県生まれ。成蹊大学法学部を卒業後、消費者金融のプロミス入社、自動与信システム開発など企画畑を歴任した。98年から現職。

 −現在の農業情勢をどう見ているのか。

 日本の食料基地・北海道においても近年、農業者の高年齢化や担い手の農業離れが急速に進み、次第に耕作放棄地が拡大する傾向にある。血縁主体の家族農業ではいずれ、離農跡地の吸収に限界が出てくる。新規参入者による補完も考えられるが、目標所得を得るために必要な農地面積が大き過ぎ、多額の設備投資が求められ、現実的には厳しい。食料安全保障や地域再生のためにも、農業を魅力ある産業に再生・創造することが基本課題だ。

□□−−−−−□□

営農企業モデルを

 −その対策をどう考えているか。

 「農業の企業化」による地域雇用確保と活性化を提案したい。サラリーマン並みの労働時間で所得を得られる営農企業モデルをつくり、普及させることだ。その受け皿として準備しているのが「財団法人・北海道農業企業化研究所」。複数の農家が機械や農地などの経営資源を集積、温室栽培や加工、流通も組み合わせたハイブリッド(複合)経営のモデルを追求していきたい。神内ファームは、環境条件をコンピューター制御した植物生産工場(温室)で、葉ものやトマトなど付加価値の高い無農薬野菜を通年出荷している。露地栽培は現状では少なくとも7、8年の経験を積まないとやれないが、法人の構成員として基本を身に付け、農業者認定が受けられるようにする。地域企業が農地を継承できれば、後継者問題は解決できる。時代の要請に応え、「家業」から「地域企業」へ営農形態を変革させていくことが必要だ。

 −今後の農政はどうあるべきか。

 これまでは生産現場に主眼があり、行政主導で進んできたことで行き詰まり感が出ている。農産物には食用に止まらず、医薬品や機能性食品、生分解プラスチックなど幅広い分野へ応用できる可能性がある。発想を転換すれば、付加価値の高い差別化商品を生み出すことができる。生産から加工、流通、販売までを手掛け、あらゆる段階で収益機会を得ていく発想へ転換しなくてはならないと考えている。

□□−−−−−□□

付加価値を創出

 −十勝農業の新たな可能性は。

 十勝は現在、広大で恵まれた生産基盤を生かし畑作、酪農など収益性の高い農業が行われているが、これで万全ではない。安定して余力のある今こそ、将来を見越して前進するべきだ。例えば、冬期間の「十勝晴れ」をうまく活用すれば、温室内部の温度を30−40度に保つことも可能。冬場に収益を上げることを考えても良いのではないか。当ファームでは、冬期間に氷を蓄え、その冷気で空調や出荷前予冷するシステムを採用している。エネルギーを節約できる上、食料備蓄の低コスト化にも有効性を発揮する。低価格の輸入農産物に破壊されてきた地域農業は、もはや価格だけで対抗することはできない。企業化によって、農産物が消費者の手元に届くまでをマネジメントし、新たな付加価値を創出する北海道農業の1つの方向性を示したい。(03.12.10)

<神内ファーム21>プロミスの名誉会長、神内良一氏が私財を投じて空知管内浦臼町で1997年に設立した農業生産法人。植物工場で野菜10種類以上を生産する一方、将来の北海道農業を担う「企業化モデル」を模索する。従業員18人。敷地面積600ヘクタール。資本金100億円。

|3|index


HOME