遺伝子組み換え作物 

消費者理解へ安全性検証
健康機能性貢献に着目
農業生物資源研究所遺伝子操作チーム長 高岩文雄氏

 生産性の向上や有用な機能性を農作物に付与する研究が進められている遺伝子組み換え作物(GMO)。食べることで健康増進などの効果が期待される一方、安全性や生態系への影響などを心配する声も根強い。GMO研究の現状と可能性などを、理学博士で独立行政法人農業生物資源研究所遺伝子操作チームの高岩文雄チーム長(50)に聞いた。(池谷智仁)

□□−−−−−□□

機能性強化へ移行

phot

農業生物資源研究所遺伝子操作チーム長 高岩文雄氏
<プロフィル>1953年栃木県出身。80年北大理学部卒。国立遺伝学研究所を経て、83年に農水省入省。99年に農業生物資源研究所に勤務、独法化した2001年から現職。一貫して遺伝子研究を続け、国内の遺伝子操作研究の第一人者。

 −GMO研究の現状と意義は。

 GMOは、病害虫や除草剤に耐性のあるトウモロコシや大豆などの第一世代から、機能性を強化、付加する第二世代へと移行している。第一世代は生産者メリットのみを追求し、現状では消費者になかなか受け入れられていない。だが、世界の人口が増加を続けると、耕地面積に限界がくることが予想される。食料危機を回避し、半乾燥地や寒冷地など本来農作物の生育に適さない場所でも栽培できるよう、GMOの技術は必要と考えている。

□□−−−−−□□

米で花粉症緩和

 −第二世代GMOの可能性は。

 大きく分類して「食料生産性の向上」「環境保全への貢献」「健康機能への貢献」「産業界への貢献」の4つの可能性がある。この中で私たちが注目しているのは、健康機能性だ。高齢化社会が進む中で、未然に病気を防ぐ予防医療の役割はますます重要になる。機能性を持ったペプチド(たんぱく質がアミノ酸に分解する前の成分)を作物に入れることでビタミンやポリフェノールなどを成育過程で蓄積させ、それを食べることで手軽に摂取ができる。現在私たちが研究しているのは「スギ花粉症緩和米」。

 −研究の内容はどのようなものか。

 花粉(抗原)が体内に入ると免疫反応が起き異物を排除しようと抗体が作られる。この反応が過剰になるのが花粉症。イネの種の中に人工的に造ったスギ花粉の抗原を組み込むことで、米にエピトープ(抗原決定基=異物を認識する部分)を造らせる。米を摂取することで免疫抑制誘導が促されるので、抗体が発生せずにアレルギー発症を回避することができる。目的の遺伝子だけを米の中に残す技術は確立されている。副作用の心配は低い。研究はマウス段階まで進み治療効果も上がっている。この技術を応用してインシュリンの分泌を促進させたり、鉄分の多いイネの研究なども行っている。

□□−−−−−□□

日本の切り札に

 −実用化への課題は。

 消費者の理解が最も大切で、最大の関心事は安全性への不安だろう。イネゲノムはすべて解析されており、どの染色体に何を入れれば大丈夫なのかまで調べている。今後は、ほ場で栽培し、環境への影響や遺伝子汚染など安全性を調査する予定。基礎研究を続け、データを示すことで消費者や国の理解を得たい。農業はグローバル化し、価格面では途上国に勝てない。GMOによって付加価値を与えれば輸出にもつながる。将来的にはさまざまな作物への応用も可能で、日本の切り札となり得る技術と考えている。(03.12.09)

|2|index


HOME