農村生活体験 

自然の中で“生きる知恵”
教育に最適の場

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子どもが共同生活

 上士幌町市街地から10キロほど北東にある居辺地区の牧草地帯に農村生活体験塾「大地の学校」がある。自然への好奇心が強い子や都会生活になじめない子どもが、親元を離れて長期間、家事や農作業をこなしながら、地元の学校へ通っている。

 「ここでの生活は昔の子どもなら普通だった。時代の便利さが、日常生活する上での知恵や知識を奪い、子どもの社会性を摘んでいる」と同学校の森田真礼夫代表(50)。自然に恵まれた農村生活は責任感と協調性を育て、都会では得がたい“生きる知恵”を身に付けさせる。「農村は生活と職場が密接している場。生きるための過程がつぶさに垣間見られる」とその意義を語る。

 同校では共同生活するために、子ども1人ひとりの仕事が不可欠だ。食材調達のため、夏場は農作業が日課。種まきと収穫だけの体験型とは違い、無農薬栽培のため、毎日の草取りと虫取りがメーンとなる。関西出身で小学6年生の悠暉君は「苦労したから野菜の味も最高」と作業の意義を理解している。

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日課の動物の世話に汗を流す「大地の学校」の小学生
(折原徹也撮影)

 早朝から餌を与えてきた動物が、時に食卓に並ぶこともある。「子どもは初め悲しんでいるが、それゆえ食べ物の大切さが分かる」と森田代表。生活を通し、子どもは人間本来の営みを自然に学び取っているようだ。

農家に実習生

 一方、引きこもりや不登校生を受け入れている個人農家もある。幕別町のある農家では20年前から、都市圏からの要望を受け、毎年2、3人を農業実習生として受け入れている。

 現在、幕別町に住む利加子(27)さんは不登校気味になった高校3年生のとき、千葉県から単独でこの農家を訪ねた。

 「不登校になってからは、家族の会話が減った。人目を避けて生活は昼夜が逆になり、次第に自分の部屋に引きこもりがちになった」(利加子さん)。そんな中、「自分を変えたい」という強い決意で望んだ農村生活。短期からの挑戦だったが、23歳のときに初めて1年を通して農作業を体験。利加子さんは「四季を通じて農業に携わることで、何とも言えない達成感がわき、自分に自信が付いた」と当時を振り返る。

 また、体を動かし、大家族の農家で暮らすことで、規則正しい生活、人との触れ合いが自然に身に付いた。今は農業青年と結婚し、子育てに奮闘中。利加子さんは「早く農作業に出て直売などで人と出会いたい」とあくまで前向きだ。

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感性や言葉を培う

 人間育成における農業の役割について、十勝の小・中学校で約20年間、教育現場に携わった北海道教育大学の田中実教授は「日本人の感性や言葉の豊かさは、四季の自然変化に対応してきた農耕文化で培われた。現在の都会生活ではそれが失われている。教育も農業も厳しさと共に優しさのある自然が欠かせない」と語る。

 また、森田代表は凶悪な少年犯罪が増加する現状に対し、「時代の流れに逆行してでも、親が意識的に子どもを取り巻く環境を考えることが必要」と提言。その上で「農村生活は(子どもの教育に)最適の場」と付け加えている。 (和田善史郎)(おわり)(03.12.03)

<大地の学校>1986年、大阪市出身の森田代表が牛乳の産地直送販売業をしながら、上士幌町を中心に夏休み期間だけの農村生活体験を開始。93年に家族で同町に移住し、95年から従来の短期教室以外に通年制の農村留学部門(小学生)を開設。98年には中学生、02年には酪農実習生も受け入れ。現在9期目で、森田夫妻とその子供4人、留学生8人が、農村での仕事や生活を体験している。

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