食の提供 

地域に根差し商業と融合
質重視への転換訴える

 北の屋台は今夏、オープン2周年を迎えた。管外からの観光客はもとより、地元住民からも愛され「農家直送の旬を味わえる観光スポット」として定着。基幹産業・農業を生かした先進的な挑戦の今後の展開に期待が掛かる。仕掛け人の坂本和昭さんに取り組み経緯などを聞いた。(広田実)

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地産地消先取り
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「地元にしかない、農業を核にした観光戦略構想」を訴える坂本さん
 右肩上がりの経済にかげりが見え始めた中で、現代社会の大量生産、大量消費システムに疑問を抱きました。21世紀を見据えた“質重視”への転換を訴えたかったのが発端です。

 農産物を例に挙げてみると、十勝は大生産地と言われながら本当においしいものは都府県へ流れてしまい、地元の人は残り物を口にしている実態にあります。JA系統による一元集荷体制はこれまで、農家経営を安定化させ一定の成果を上げてきましたが、他方では“作っておしまい”的な消費者意識が希薄な農家を増やしてきた側面も否定できません。

 「北の屋台」構想は、農家と消費者が互いに顔の見える関係を取り戻し、スローフードや地産地消を先取りする、格好の場になるとの結論に行きついたのです。

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生産者と身近に

 18店舗の中でもシンボル的な存在と言える「農屋(みのりや)」は、志を同じくする農家4人がオーナーです。肉、野菜や牛乳、チーズなど自らが生産した食材を提供、取れたて新鮮な旬の食材を客の目の前で調理し、食べてもらえる点が最大の特徴です。

 客が細かな味の好みを注文したり食材の由来を確かめることができ、店主との会話が成立します。互いの接点が確実に築けられれば今後、大量流入が予想される輸入農産物への対抗措置になるのです。実際、BSE(牛海綿状脳症)発生以降、食の安全が声高に叫ばれましたが、屋台はほとんど影響を受けていません。

 消費者は生産者との身近な関係を求めているということを確認できました。ファストフードのような画一的なシステムから、本当のコミュニケーションは決して生まれないのです。土産物を外に持って行って売る発想ではなく、十勝にしかない食べ方や遊び方などにこだわり、魅力を感じた外部の人が集まってくる形をあくまで理想に掲げます。

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観光との二毛作

 屋台を第一ステップとして、次は“農業と観光の二毛作”を目指しています。3月に有志が集まって設立した「地遊舎(じゆうしゃ)」は、十勝固有の広大な農村景観を観光資源として有効利用することが活動の目的。耕作に不向きな丘陵地帯も資源として生かせるよう発想の転換を提案していきます。

 冬場の約5カ月間、雪に覆われて利用されていない農地をウインタースポーツの場にしたい。白銀の世界をスノーモービルで遊ぶようなことが定着すれば、土地の有効活用、雇用創出や交流人口の増加にもつながるでしょう。

 農業の工業化ではなく、商業との融合をより一層進めなくてはいけません。これからも時代を読みながら、農業という地域に根差した資源を生かし、他にまねのできないオンリーワン(唯一)の存在を追求していきます。(03.08.25)

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北の起業広場協同組合専務理事 坂本和昭氏

<プロフィル>1958年帯広市生まれ、駒澤大学法学部卒。96年に設立された十勝環境ラボラトリー事務局長に就任、2000年から北の起業広場専務理事に。著書に「北の屋台読本」(01年、メタブレーン)。

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