景観・体験 

年間通し魅力的な“商品”必要
異業種と手を組んで

 癒やしの空間としての農村景観、農作業の見学・体験ツアーが、十勝ならではの観光資源として注目され始めている。サクランボの町、山形県寒河江市でサクランボの種吹き飛ばし大会や雪中いちご狩りなど「観光農業」のユニークなイベントを次々に展開、国が日本各地の観光を育てるための地域の観光リーダーを認定する「観光カリスマ」にも選定された工藤順一さん(58)に、農業と観光を結びつけるための方策を聞いた。(岩城由彦)

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無限の観光資源
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「農業は無限の観光資源」と言い切る工藤さん
 農業は無限の観光資源。寒河江市が全国に先駆けた観光農業として「さくらんぼの木のオーナー制」を始めたのは1976年。経済成長が進んで心にゆとりが生まれれば、レジャーの中に必ず農業が溶け込むようになると当時から予測していました。

 「地産地消」のポリシーのもと、地元でしか食べられないものを提供する努力を続ければ、デフレの逆風下でも農業や観光は必ず生き残れると確信します。観光客には「食べれば分かる」ではなく、なぜおいしいのかをきちんと説明し、納得してもらわなければなりません。

 農業と観光を結びつけるには農業と地場産業、観光地をドッキングすることが必要。寒河江では行政、農家、農協、各民間団体を結集した地域ぐるみの「周年観光推進協議会」を組織し、首都圏への営業活動も展開しています。農業があらゆる異業種分野と手を組み、観光のネットワークをつくれば地域の活性化につながります。

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まず“新住民”対象

 観光農業をめぐる全国的な課題は、通年営業のレストランや直売所が少なく、宿や観光案内所から畑までの交通の便が悪いこと。売り込む材料そのものは、どの地域にもたくさんあります。帯広・十勝では、広大な農村風景が立派な観光資源になると言えます。

 一方、365日人を呼べる観光農業を実現するには、年間を通して魅力的な“商品”がなければだめ。教養(プライド)、権力、伝統に縛られない思い切ったイベント企画などをスピーディーに打ち出し、行動に移すことが大切です。

 まずは外部の観光客の反応を探るため、“新住民”の転勤族をターゲットとし、十勝を代表する豆を使ったイベントなどを考えてみては。日高昆布と十勝の農産物を融合して「ミネラル農業」をアピールするのも面白い。ごみのリサイクルと有機栽培も結びつけられるかもしれません。その気になれば、石ころや雑草も立派な観光資源に生まれ変わるということです。

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本物の農業見せる

 食の安全への関心が高まる中、生の農業を見たり体験したりすることへの興味も増しています。農作業で自ら汗水を流してもらうことが、日本農業の原点を理解してもらうことにつながります。農家にとっても、観光客の目にさらされるのは最大の学習。農家がプロに徹して人と触れ合う喜びを実感し、安全・安心・健康を大切にした本物の農業を見せていくことが、国内農業を守る重要な要素になります。

 元気のあるところにはパワーがある。パワーがあるところには人が集まる。そこにこそ、観光客を引き寄せるロマンとドラマが生まれるのです。(03.08.23)

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観光カリスマ 工藤順一氏

<プロフィル>1945年山形県出身。今年1月、「観光カリスマ」第一陣に選ばれた。3月に約38年間勤めたJAを退職し、寒河江(さがえ)市内に観光カリスマ工藤事務所を開設。全国で講演やアドバイザーをこなす。JA時代に周年観光を目指して提唱した観光農業が実を結び、約30年前には年間わずか1万人だった観光客が165万人にまで増加。寒河江の名を全国に知らしめた。

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