グリーンツーリズム 

景色や食材視覚的にPRを
農村女性の地位向上も

 農家が民宿や農業体験、レストランを手掛けるグリーンツーリズム(以下GT)が全国的にも注目を浴びている。農家の新たな所得、若い世代の就業の場としても将来への期待は大きい。芽室町での勤務経験を持ち、現在は「農村ツーリズムをはじめとする農業と農村経済の多角化」について研究している千葉大学園芸学部の大江靖雄教授に、日本社会でGTが果たす役割、十勝での可能性などについて聞いた。(和田善史郎)

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潜在的にニーズ
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日本でもグリーンツーリズムの必要性が高まるという大江教授
 GTは都会に住む人が普段体験できない農村の自然、伝統文化、地場産品などをその場で宿泊して楽しむこと。世界的にも農村で宿泊し、余暇を過ごすことは基本となっています。農業と農村の持つ多面的機能を活用し、農家がGTを経営として成り立たせやすいのは、保健休養と情操教育の分野。農家が自立的に取り組むことで所得に加え、その機能も相乗的に発達すると考えます。都市と農村の人口格差が大きい日本ではGTの持つ潜在的なニーズは高く、都会と田舎のバランスが取れた安定的な地域社会を実現するためにも必要です。

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体験的なものを

 イタリアでは1985年に、GTと同じ意味のアグリツーリズモを振興するための法律ができました。認定農業者に限られた取り組みで、国の補助制度もあります。ただ宿泊施設は、納屋や畜舎などを改修することを前提とし、農村の伝統的な景観保全に配慮しています。高い失業率に悩む若者の就農の場となっていて、ひとつの産業として成り立っています。

 日本の場合、長期休暇制度がないため、日帰り客を含めた体験的なものを考えていかないとうまくいきません。体験型GTでは季節によってピークの差があるため、加工体験やレストランなどで通年化する必要があります。これからの農家は農産物の生産だけではなく、GTを通して都会から人を呼ぶことで、2つの市場が成立すると考え、視野を広げることが重要です。

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普及機関で支え

 また、GTの主役は女性で、農村での女性の地位向上にもつながります。保守的な農村ではGTの取り組みを周囲に理解してもらうのは大変ですので、普及機関のモラルサポートで意欲を支えることが大切です。地道な活動を続けることで「農家を応援したい」というネットワークが広がり、地元が気づかない地域資源を発見させてくれます。

 十勝は景観的にヨーロッパに似ており、農作物にはクリーンなイメージがあります。ただ都市圏から遠く、生産だけで手いっぱいの大規模農家が多いのが現状。人を雇ってまでもGTに取り組む余裕がない場合には、アパートメント方式で(利用者に)自由に過ごしてもらう形もあります。最終的にGTは、“本物”をどうやって提供していくかです。十勝は景色、食材で引けをとらない。後はそれをどうビジュアル(視覚的)にPRしていくかでしょう。(03.08.22)

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 農業、建設業以外に目ぼしい産業を持たない十勝にとって、交流人口を増加させる観光は第三の産業として発展が期待されている。魅力ある観光を考えるとき、特に十勝では農業との関連を避けては通れない。年間キャンペーン第4部では、農業と観光の接点を探る。

千葉大学園芸学部 大江靖雄教授

<プロフィル>1954年川崎市生まれ。北大大学院環境科学研究科修士課程修了後、道庁、85年から芽室町の農林水産省北海道農業試験場研究員、92年から同中国農業試験場の地域計画研究室長、同農村システム研究室長を経て、98年千葉大学園芸学部助教授に就任。01年から現職。著書に「農業と農村多角化の経済分析」(農林統計協会)などがある。

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