農業の新たな挑戦
全国先進地ルポ

新潟県上越市・中央農業総研北陸研究センター


「農」プラス「IT」
ほ場単位で精密な管理
GPS活用し「地力マップ」

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「食品流通に革命」
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GPSとデジタルカメラ搭載のトラクターで葉の繁茂度合いを測定、窒素吸収量を推定する(2001年7月、中央農業総研北陸研究センター撮影)

 「IT(情報技術)を取り入れた精密農業(PF)は、環境に優しい効率的な農業を実現する。ほ場単位の細やかな栽培管理技術は食品流通に革命をもたらすだろう」。新潟県上越市にある独立行政法人・中央農業総研北陸研究センターの総合研究第1チームで、水稲生産へのPF導入を模索する鳥山和伸チーム長(49)は、こう力を込めた。

 同研究センターはコシヒカリの産地・新潟県の西部に位置する。冬を迎え、周囲に広がる水田は一面雪に覆われた銀世界に姿を変えていた。

 北陸地域では、ほ場を集積する大区画基盤整備を進めているが、施工後に生育や収量むらが多発した。米のブランド間競争は激しく、高品質米の生産は販路確保の絶対条件。同研究センターは1998年からPFを活用した原因究明に着手、航空写真などの分析から、切り土、盛り土の地力格差が原因と突き止めた。

 さらに、鳥山チーム長は「PFによるほ場の栽培管理データベースは、外国産の品質保証付き農産物への対抗策となりうる」と指摘する。EU諸国では95年ごろから、農家がISO14001(環境管理の国際規格)取得に動き出した。詳細な栽培管理データで生産物の品質を保証するためだ。「日本でよく言われている『顔の見える農業』だけでは、この規格に対抗できない」

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生産性が向上

 これまで5年間の成果は、GPS(全地球測位システム)を活用した「地力マップ」に代表される。土壌中の窒素量や生育、収量調査の結果をパソコン上で小区画ごとに入力。出来上がった水田の地図を基に、地力に応じた施肥や防除計画の“処方せん”を作った。

 デジタルカメラを使った窒素吸収量の推定など多方面に及ぶ精密管理の効果として、生産性の向上がまず確認できた。倒伏割合が減ったことで作業性が向上、収量、品質も安定した。水田を貸与した三和村の鳴海農場代表・鳴海一文さん(52)は「前の年の収量を基に肥料を加減するのはこれまでもやってきたが、PFによりその効果が高まった」と信頼を寄せる。

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コストにも自信

 実用化の前にコストの問題を解決しなければならないが、鳥山チーム長は「費用対効果の試算では、JA単位の初期投資約2000万円は、7−10年で回収できる。現実的な数値であり夢物語ではないレベル」と自信をみせる。IT機器の高性能化とコストダウンもこれを下支えしている。

 今後は導入を希望するJAと共同で、施肥量推定ソフトの開発に向け、さらに研究を進める。「安全安心な栽培システムを確立するには、データの裏付けが必要。この取り組みを通じて国産農産物の信頼性を高めていきたい」と鳥山チーム長。  高品質と安心安全を同時に実現するには、たとえ大規模経営でも、細かな栽培管理が不可欠になってくる。PFはその有効な手段のひとつだと確信した。(広田実)(03.1.5)

<メモ>精密農業は、GPSの位置情報と土壌・収量分析などの調査結果を組み合わせ「地力マップ」や「収量マップ」を細かく作製。ほ場の肥よく度に応じて肥料などを徹底管理することで低コスト農業を目指す。アメリカでは80年代に、国内では98年ごろから研究が始まり、東京農工大や北大などが「日本型PF」開発を目指し、研究に取り組んでいる。

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