食品残さ物利用・下

「甘夏ペースト」事業化に挑戦
販売先の確保課題

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発がん抑制効果

 「甘夏みかんの皮に発がん抑制効果成分が含まれていることが分かった。この特徴を生かして何か面白いことができないか」。甘夏の皮を使ったペーストを開発した熊本県立の食品加工研究所の工藤康文研究参事(48)は、研究のきっかけを語る。

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甘夏ペーストを使用したジャムやドレッシングなどの商品。福田農場では県食加研が開発したノウハウをさまざまな加工製品に活用している

 熊本県は日本一の甘夏産地。だが、皮が厚く食べにくいことから需要は減り、1982年に9万5610トンあった収穫量は2000年には1万9000トンまで落ち込んでいる。そんな甘夏に違った角度から脚光が当たり、地場産品にこだわる人たちの手で事業化に結びついた。

 発がん抑制効果があるのはオーラプテンという成分。県内には甘夏ジュース生産工場があり、搾った後の皮が残さ物として大量に発生する。マーマレードなどに加工処理できる量は限られており、大半はたい肥にするか産業廃棄物として捨てるしかなかった。

 苦みのある皮を食材にするには加工が必要。大量消費につながる商品化を目指し、1999年度から3カ年かけてペースト化の技術を確立した。「水分や甘み成分が入っておらず、加工用途は広がるはず」と工藤参事。

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可能性引き出す

 このペーストの事業化に挑戦しているのが、水俣市にある観光農園「福田農場」だ。「甘夏は水俣から全国に通用する商品。皮の持つ可能性を最大限に引き出せると思った」−福田興次社長(57)は食加研の事業提案を即決した動機を説明する。40年前から栽培を続ける甘夏には、人一倍のこだわりを持っている。

 2002年度から、ジュース用に栽培した自社農場の甘夏を原料にペースト生産を開始。冷凍保存した皮を必要に応じて加工するため、通年供給が可能だ。ペーストは、同農場で販売するパンやドレッシングなどに使用する。「酸味や苦みが強い甘夏は個性があり、加工に適している」と福田社長は話す。

 「問題は販売」と関係者は声をそろえる。現在、ペーストの販売先は菓子製造業者などが主だが、浸透はいまひとつ。「値段が高いのも1つの要因。大量生産でコストを下げる必要がある」と同農場の千々岩義樹工場長(46)は感じている。

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ブランド確立を

 また、工藤参事は「地場産品にこだわると市場を狭くする危険性がある」とちょっと意外な指摘をする。「地元の人は甘夏の旬の時期を知っており、通年供給に違和感を感じる人も少なくない」。歴史ある特産物ならではの“盲点”と言える。ただ「平凡なものでは特徴がでず、市場競争に勝てなくなる」(工藤参事)。オーラプテンの知名度を上げ、商品ブランドを確立し、販売先を確保することが当面の課題だ。

 熊本食加研の小柳圭子技師(26)は強調する。「農産物加工は付加価値を高めて農家所得を上げることに力点が置かれていたが、これからは、1つの産業、経営にまで発展させた考え方が必要になってくる」。地場産品の特徴を生かしながら、多くの人に受け入れられる商品をいかに開発、販売していくか−。産地発加工の発展はここにかかっている。(池谷智仁)(03.06.16)

<甘夏ペースト>皮の鮮やかな黄色と香りが特徴。果実を搾った後の皮を切り、苦みを取るため水にさらす。脱水、冷凍保存して1次処理が終わる。2次処理は必要に応じて解凍し、さらに細かく切ってから石うすでつぶし、真空包装にして完成する。現在は皮についた袋や種を手作業で除去しているため、手間がかかる。

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