農家の挑戦・上

将来考え付加価値に活路
経営に占める位置付け変化

□□−−−−−□□

牧場内に加工場

 「十勝農業はまだ恵まれているが、将来的には農作物に付加価値が必要となる時代が来る」−。大樹町で「夢がいっぱい牧場」を営む片岡文洋さん(57)は10年以上前から、肉牛の加工販売を手掛けてきた。

 1971年に牧場を開いた片岡さんにとって、経営の転機は89年、牛肉の輸入自由化をきっかけに訪れた。
phot

生産者の顔の見える牛肉として地元スーパーの店頭にも並ぶ「夢がいっぱい牧場」の食品

 安価な輸入牛の増加で国産牛価格は低迷。将来の経営を改めて考えた時、大学恩師の言葉が浮かんだ。「市場価格では生き残れない。牛肉には付加価値が必要だ」。農家単独では採算が合わないとの見方もあったが、あえて牛肉加工に挑戦する決意をした。

 まず、着手したのが自家産牛肉を使ったハンバーグの開発。最初は加工の業者委託も考えたが、「やるからには商品すべてに責任を持ちたい」と、92年に牧場内に加工場を建設、牛の飼育から加工まですべてに目を届かせる体制を作った。後に、直売所や簡易レストランも開設した。

 特にこだわっているのは牛肉の熟成技術。グルタミン酸などのうまみ成分を十分に引き出す手法を試行錯誤の末、確立。科学的な裏付けを取るため、帯広畜産大学に通った。技術を確実なものにするのに4年を費やしたという。

□□−−−−−□□

BSEが追い風

 販売面でも最初は孤軍奮闘。大小問わず物産展などのイベントに参加して地道に商品をPRした。これらの実績が、“顔の見える牛肉”を求める地元スーパーの目に留まり、昨年、販売契約が実現。今では月に十数頭分の牛肉を取引する。「皮肉なことだが、BSE(牛海綿状脳症)が追い風となった」と振り返る。

 片岡さんとは別の理由で加工に踏み込んだ人もいる。芽室町平和の鈴木由加さん(37)だ。鈴木さんはもともと農業以外の出身で、鈴木農場を経営する哲也さんと結婚、農家の一員となった。趣味だった加工をビジネスに切り替えたのは2年前、自宅横に農産物加工場「すずきっちん」を開設してからだ。

 「農作業の手伝いだけでなく、経営の中に自分の責任分野を持つことで、農家の嫁の存在感を高めたかった」と鈴木さん。資金調達には苦労したが、家族の後押しを受けながら、「低コスト」で加工場を作った。

□□−−−−−□□

消費者反応が喜び

 自分の畑で取れた野菜などを旬の時期に家庭的な味付けで加工する。添加物は一切使わない。「いもだんご」「かぼちゃだんご」などの9商品はインターネットで全国に通販。顧客は100人を超え、経営は軌道に乗り始めた。新商品の開発にも余念がない。

 「消費者の顔を思い浮かべられることが、農作業への意識を変えた」と鈴木さんは語る。片岡さんも「これまで以上に自分の牛に自信が持てるようになった」と付け加える。消費者の反応が生産する喜びを再認識させ、取り組みへの活力源となっているようだ。

 農家自らが取り組む加工は、どちらかと言えば“サイドビジネス”とみられることが多い。しかし、消費者ニーズの変化などを背景に、少しずつではあるが農業経営の中の位置付けが変わってきた。(和田善史郎)(03.06.12)

<夢がいっぱい牧場>大樹町萠和181。主なメニューは、ビーフハンバーグ(100グラム200円から)、焼き肉・すき焼き用精肉(300グラム1000円から)、各種コロッケ(5個入り、700円)、ビフトロ(50グラム200円)など。電話・ファクス01558・6・5518

<すずきっちん>芽室町平和西14線13。主なメニューは「かぼちゃ畑のだんごちゃん」(10個入り500円)、「いも畑のだんごちゃん」(同)、ミートソース(500グラム入り600円)、ギョーザ(280グラム500円)など。電話0155・62・3918、ファクス62・6619

|3|index


HOME