農業の新たな挑戦
全国先進地ルポ

兵庫県神戸市


「農」プラス「教育」
心に残る“本物体験”学習
市教委が農園管理

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利用は2万人超
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10月11月は収穫の秋。稲をはじめさまざまな野菜や果物を収穫する。アイガモ農法なども行い、子供たちに伝えている(神出自然教育園提供)

 「農園芸作業を通して子供たちに“本物体験”をさせる。その中で自然を愛する心や人とのかかわりを学んでいくのです」。神出自然教育園の清水篤園長が果樹園で見事に実ったカキを記者に手渡しながら語った。

 神戸市中心街から車で約1時間半。見渡す限りの田園風景に溶け込むように教育園はあった。「ずっと先の道路までここの敷地。甲子園球場と同じ広さなんですよ」。清水園長が教えてくれた。

 同園は神戸市教育委員会が1976年、旧神戸西高校園芸科の農場跡地に開設。教育課程の中で自然体験が注目されたことや阪神・淡路大震災後、子供たちの心のケアが重視されたのを受け、99年度から5カ年計画で整備を進めている。総事業費は約10億円。95年度に約8000人だった利用者数は、新施設が稼働しはじめた2001年度に約2万2000人に増えた。「教育委員会がこのような施設を運営しているのは全国でここだけ」と清水園長は胸を張る。

 同園を訪れた日、近くの幼稚園児が豆腐作りを体験していた。園児たちは手作り豆腐に「おいしい」とご満悦。母親の池田育子さんは「取れたものを素材から見ながら作ることができるいい機会」と評価した。

 プログラムは稲刈りや果物のジャム作り、押し花、草木染など多彩で、新学習指導要領を反映している。学校ごと生徒を受け入れる際には、事前に綿密な打ち合わせを実施。アンケート結果をみると「子供たちの心に残り、身に付いた学習になった」(ある小学校教諭)と好評だ。

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地域ぐるみで協力

 最大の特色は、管理のサポートをボランティアに頼っていること。苗の定植や植え替え作業は、神出町の農家や住人らで作る「教育園を育てる会」(45人)が交代で担当。記者が訪ねた日も10人ほどが野菜の植え替えに汗を流していた。会員の藤井セツ子さんは「地元が知らん顔では情けない。ボランティアは当然のこと」とさらりと話す。神戸市シルバーカレッジの学生らも月に1、2回交代で作業にやってくる。

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お礼は「現物支給」

 夏休みなどに開く「植栽」「草木染」などの親子体験教室で講師を務めるのも市内小学校教諭のボランティア。清水園長は「お礼はメロンやスイカなどの現物支給。手間暇かけて育てているので、市販のものとは味が違うんですよ」と笑う。

 同園は現在、神出町全体を舞台とした田園学習プログラムを検討中だ。清水園長は「この施設は本当の意味で地域に支えられている。本物の田んぼや畑、民家をウオークラリーしながら、田園地域の良さを子供たちに認識してもらう場にしたい」と意欲を見せる。地域ぐるみで取り組む姿勢に新たな農業教育の形をみた。(岡村忍)(03.1.4)

<メモ>同園は神戸市教委指導課所管の「自然体験センター」。4ヘクタールの敷地には水田や果樹園のほか、宿泊施設や加工施設などを備えた学習棟、生態観察ができる水族館などが点在する。不登校の中学生を対象にした宿泊学習や教員の研修にも活用されている。職員は園長を含めて4人。人と環境にやさしい「エコミュージアム」を目指している。

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