農業情報化計画

eビジネス
消費者に“こだわり”直販
差別化課題に広がる可能性

 「牧場と乳製品へのこだわりをより多くの消費者に理解してもらうために、生産から販売までを一貫して手掛けたかった」−。上士幌町の十勝しんむら牧場=新村浩隆社長(31)=はここ数年で、ミルクジャムなどの乳加工品の販路を道内外へ一気に拡大した。その販売戦略を後押ししたのが、インターネットを利用した直販「eビジネス」だ。

 ミルクジャムを開発したのは3年前。百貨店の物産展などで地道なセールスを展開して、年間に10万個を売り上げる大ヒット商品に急成長させた。昨年7月には、商品や牧場の詳細な情報を提供するホームページ(HP)を更新し、インターネットで受注する仕組みを作った。出張販売との相乗効果もあり、今では毎日のようにネット経由で注文が届く。eビジネスの割合は現在、全体の3−4%だが、「どんどん増えている」という。
phot

「消費者との信頼関係」をモットーに、さりげない心づかいで乳加工品にメッセージを添える十勝しんむら牧場(折原徹也撮影)

□□−−−−−□□

牧場日誌を掲載

 HP自体の差別化を図るため、子牛の名付け親募集や牧場日誌を掲載するなどアイデアをひねっている。土作りにこだわった放牧酪農や製造過程を消費者に伝える工夫も欠かさない。

 池田町信取、八木農場の主婦八木茂美さん(45)は昨年12月から、仲間3人で組織するグループ「味菜工房」で「干しヤーコン」の販売を始めた。販売経路は、札幌の企業と池田ワイン城、HPの3つだけだが、健康食品のブームに乗り、3カ月で予定の倍となる2000袋を完売した。

 IT分野に興味のあった八木さんは2年前から、自作のHPで減農薬野菜のeビジネスに挑戦してきた。固定客はつかんだが、「最近はちょっと停滞気味」。ただ、「干しヤーコン」のヒットで、「新たな(ネット経由の)お客さんが増えた。インターネットは期待できそう」と感じた。

□□−−−−−□□

こまめにメール

 八木さんは受注、商品発送、代金入金時にこまめにメールを送信し、購入者がネット取引に不安を持たないよう努めている。顧客とのメール交換も頻繁だ。農繁期は受注確認や発送作業などの時間確保に苦労するが、「異業種の人との交流が楽しみで(eビジネスを)始めた」と苦にはならない様子だ。

 新村社長は「牧場日誌やHPの更新には手間がかかる。だがそれを惜しんでいては始めた意味がない」と話す。同牧場ではネット上の情報更新だけでなく、直販の品物には必ずメッセージを添えている。

□□−−−−−□□

農業理解の手段

 限りなく対象地域が広がるインターネットは、土地に縛られた農家のビジネスチャンスを拡大させる可能性を持つ。一方、HPの数が増えた分、販売競争は激しさを増し、商品やHPの中身で差別化ができないと、顧客を確保しづらい現実もある。道農政部企画室は「道内の農家eビジネスは、全体的に販売面で下火」と分析している。

 ただ、農家eビジネスは「売る」ことだけが目的ではないとの指摘もある。新村社長は「商品を買ってくれたお客さんに牧場に来てもらうことが大きな目標」と強調、農業への理解を広げる手段とも位置付けている。生産から販売までを手掛ける中で、消費者との信頼関係をどう築いていくかが、次の段階に進むカギになる。(和田善史郎)(03.03.14)

<農家へのパソコン普及状況>農水省が全国2000戸の農家を対象に実施したパソコン・インターネット利用に関する意向調査(昨年12月実施)では、農業経営にパソコンを利用する意向がある農家(既に使用も含む)が45・2%。そのうちインターネットの利用(同)は44%で、「eビジネス、農業紹介、消費者との交流」などの利用目的が38・9%と高い。また、道農政部によると、2002年の道内農家のパソコン所有率は29・2%(1万9904戸)で、インターネット利用率は14・9%(1万152戸)となっている。

◆十勝しんむら牧場
http://www.milkjam.com/

◆八木農場
http://www.d8.dion.ne.jp/~syagi/

|4|index


HOME