農業情報化計画

酪農への導入
経営効率化の“立役者”に
利点と欠点見極め利用

 「IT(情報技術)を上手に経営に取り入れ人間の“手伝い”をさせることは、効率的でゆとりある酪農の実現につながる」−。家畜行動学を専門とする帯広畜産大学畜産科学科の柏村文郎教授(52)はこう語る。

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新システム続々

 柏村教授は「乳牛管理の自動化」をテーマに、これまでポケットベルを利用した牛誘導装置を開発したほか、先端機器・搾乳ロボットの実証実験にも携わってきた。「ミルキングパーラーも初めは研究主導の『夢物語』だった。経営高度化に向けた新システムの導入は今後も進む」と見る。
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酪農家をほ乳作業から解放する自動ほ乳システム。子牛は1頭ずつドリンクステーションに入り、乳頭(手前)経由でミルクを飲む(折原徹也撮影)

 酪農機器メーカー・北原電牧(本社札幌)は、牛1頭ごとに適量の餌を与える自動給餌装置を商品化した。乳牛管理プログラム(ふりーすらんど)では、携帯電話を利用して自宅のパソコンにある種付けや分べん時期などのデータを牛舎で参照できる仕組みを作った。

 このほか、酪農の現場には、乳検(牛群検定)成績を活用した牛群管理、パソコンによる飼料設計、万歩計を応用した発情発見装置などが導入された。いずれも牛が発する情報をデータに変え新分野を切り開いた。これらの基礎技術にITは欠かせない。ITは農家が経験や勘に頼っていた部分を客観的な数値にすることで経営効率化の“立役者”となっている。

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労働の質向上

 音更町東士狩の山本牧場は、総飼養頭数が約520頭に上る大規模経営。山本良二さん(54)は「多頭化によるスケールメリットを追求してきたが、ここ数年は『労働の質向上』にも重点を置いている」と話す。毎朝夕、約30頭の子牛へのほ乳作業を省力化しようと、2001年11月に「自動ほ乳システム」の導入に踏み切った。

 「肉体的負担が大幅に軽減された。生じた余裕を子牛の観察に充てられるので、事故率は低く抑えられている」と山本さん。装置と周辺整備に要した数百万円の投資に見合う費用対効果は十分に得られたと感じている。

 管内では、自動ほ乳システムを導入して生後数日から子牛を受け入れる育成牧場も出始めた。分業により生産コストを削減しようとする関係者の意識が背景にある。

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人間の目がカギ

 一方で、十勝北部地区農業改良普及センターの村上明弘主査(60)は「搾乳やほ乳の自動化は、人と牛が接するチャンスを減らし、人慣れしない牛をつくる可能性もある」と指摘する。機械化による利点と欠点を良く理解した上で、自分の経営に合った形で運用することが肝心という意味だ。

 IT機器の低価格化で、新しいシステムが普及する流れは今後も加速する。村上さんは「ITを駆使して収集できるデータは膨大。しかし、最後はその意味するところを正しく読み取る人間の目がカギになる」と強調する。生き物相手の酪農は、機器の導入だけで効率化や省力化が達成できるとは限らない難しさがある。ITを“パートナー”としていかに使いこなすかが課題となっていく。(広田実)(03.03.12)

<自動ほ乳システム>粉ミルクを溶き、1頭ごとに設定量を給与するという一連の作業を全自動化したシステム。1頭が飲んだ量や回数を正確に記録する。少量多回数給与によって下痢が減少、運動量が増え足腰が丈夫になるメリットが指摘されている。管内では100台以上が稼働中。

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