農業情報化計画

リモートセンシング
人工衛星活用実用段階へ
高度な情報分析にも道

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収穫適期を判断

 人工衛星に搭載したカメラがさまざまな光の波長で小麦畑を撮影する。地上では、農家らがこの衛星データを分析して、収穫順位に判断を下す。芽室町内では今年度から、こうした「リモートセンシング(遠隔探査)」で、コンバインや乾燥施設の運用を効率化する取り組みが始まっている。
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一般農家への普及が期待されているリモートセンシング技術。芽室町内では衛星画像をもとに、小麦の収穫適期を探る穂水分解析が試されている(道農業研究センター、折原徹也撮影)

 プロジェクトは人工衛星がとらえた画像データから同一のほ場内でも差が表れる穂水分の低下を的確につかむことが基本。最適の収穫順位が見極められれば、品質向上や作業ロスの軽減につながる。この技術は、経験や勘に頼る側面が大きかった従来の営農形態を一変させる要素を秘めている。

 少ない労力で畑の隅々まで知ることができるメリットは、収穫順位の決定以外にも生かされる。画像情報を葉色、たんぱく量、草丈といった既存の指標に換算すれば、作物の生育状況に応じたきめ細やかな施肥などに生かすことができるからだ。あらゆる作物への応用が可能で、より確実な収量増に期待は膨らむ。

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撮影コストは高額

 プロジェクトに参加している農業技術研究機構北海道農業研究センター畑作研究部の奥野林太郎研究員は「既存のGIS(地理情報システム)、GPS(全地球測位システム)と併用すれば、それぞれの農地の土壌や周辺環境の条件に沿った解析もできる」という。高性能パソコンが農家に普及したことで、多角的なデータを組み合わせた高度な情報分析へも道が開かれつつある。

 人工衛星から送られる画像データは現在、1メートル四方まで解像できる精度。ただ、1回の撮影コストは数百万円と高額。衛星軌道の通過周期や天候などの事情で撮影機会が年数回と少なく、迅速さが要求される病虫害への対応は難しい。農家個人が取り入れる段階には至っていないのが現状だ。

 これに対し、帯広畜産大学畜産科学科の辻修助教授(地域環境工学分野)は「肥料や農薬の散布をコントロールし、環境に負荷をかけない営農のモニタリングに役立てられる。宇宙から見た土壌データを安全な食料生産のPRに利用すれば、十勝ブランドの基盤強化にもつながる」と提案する。

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的確な情報提供を

 人工衛星を利用したリモートセンシングは、本州の米作地帯などで積極的に試されているが、実用レベルで効果を引き出せるのは、十勝のような大規模経営地帯をおいてほかにない。この分野で3年前から独自の試験サイトを展開している「ズコーシャ」(帯広市西18北1)は今年、リモートセンシングで得られたデータを、施肥量調節や土壌管理などの営農に生かすプロトタイプのシステムを供給する。

 農業者からは「自分の畑に合った的確な対処法を与えてくれる仕組みがほしい」との要望が上がっている。同社総合科学研究所の星山賢一取締役所長は「営農の“処方せん”となる情報をいかに的確に提供できるか−その中身が問われる」と力を込める。人工衛星と情報処理の先端技術を組み合わせた新たな営農手法は、確実に実験から実用段階へ入りつつある。(岩城由彦)(03.03.11)

<リモートセンシング>人工衛星や航空機などに搭載した光、電磁波といったセンサー(観測器)を使い、地表にある物体や空間・流体などのさまざまな現象を広い範囲にわたって直接触れずに調査する方法の総称。農業分野では作物の作付け状況、収量、土壌の特性、熱・水資源の分布などが測定対象となっている。

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