農業情報化計画

モバイル農家
「ケータイ」活用し作業日誌
市販機器を高度に利用

 農家が作業着の胸ポケットにカメラ付き携帯電話を差し込み、畑に向かう。消費者はこの電話から送られてくる動画を家庭のパソコンや携帯電話で確認できる−。近い将来、こんなシステムが実現する可能性がある。

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現場活用で最先端
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「ケータイ」を使って畑で作業日誌を入力している未来農業集団。市販されているさまざまな機器やシステムを試している(折原徹也撮影)

 芽室を中心とした「未来農業集団」(山上美樹彦代表)は、農業現場のIT(情報技術)活用で国内最先端を走っている。基本となる考え方は「畑(現場)主義」で、この実現に中心的な役割を果たしている機材が「ケータイ」こと携帯電話。会員は「モバイル(移動体通信)農家」を地で行く。

 取り組みのきっかけは2年前の春、「ケータイ」を使った営農情報のデータベース化に着手したことだった。会員は、種まきや定植、除草、農薬散布などすべての農作業日誌を「ケータイ」で打ち込み、デジタル情報として保存している。

 同集団アドバイザーの横山和成北海道農業研究センター畑作研究部主任研究官は、土壌微生物の分析が本業。「畑の土がなぜこうなったのかを知るために、農家の頭と体に“経験と勘”という形でしみついている作業情報を文字や写真で記録したいと考えた」。経験豊富な農家の「作業日誌」は、新規就農者も含め他の農家にとって営農の“参考書”になる。

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リアルタイムで

 当初は、自宅のパソコンで日誌やデジタルカメラの画像を処理していたが、「ケータイ」の多機能化が進んだことで、作業は電話1台で済むようになった。独自のソフトを開発し、ほぼすべての入力を、畑でリアルタイムにできるよう工夫した。さらに、GPS(全地球測位システム)機能を活用して日誌の入力場所までも発信する。現場主義の「証明書」のようなものだ。

 横山さんは「携帯電話のカメラで撮った作物の画像をコンピューターで解析し、施肥量を分析することも可能になるのではないか」と将来性に期待する。

 現場で蓄積した作業日誌は、生産物のトレーサビリティ(追跡可能性)の分野でも高度利用している。特許出願中のシステムは、畑で記録した日誌のほか、加工や流通、小売などの段階でも情報を付加、最後に消費者の感想を加え、“追跡”を完了する仕組み。入力はやはり「ケータイ」が主役だ。

 事務局の吉田博之さん(41)は「消費者が好きなときに農作業を見ることができるようになるのは遠いことではない」と推測する。「常に自分の作業が見られていると思えば、農家の仕事に緊張感が出てくる」と話す。

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通話料など課題に

 同集団の特徴は、市販されている安価な機器を、豊富なアイデアで高度に使いこなしていることだ。目下の悩みは「月数万円に達する通話料」(吉田さん)だが、横山さんは「IP電話(インターネット経由で通話する電話)も使えるケータイが市販されれば、通話料は一定以上かからず、通信速度が今の100倍ほどになる。今まで以上の情報を畑から送れるようになるはず」と予測する。

 止まることを知らない「ケータイ」の進化とともに、未来農業集団の挑戦は広がっていく。(平田幸嗣)(03.03.10)

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 パソコンや携帯電話などIT(情報技術)関連機器の急速な進歩が、農業にも大きな影響を与えている。営農技術の高度化はもちろん、消費者の安心・安全志向を背景にした販売戦略にもITは有効な手段となりうる。先端の技術やシステムを導入し、農業のあり方を変えようとする取り組みの底流を探る。

<未来農業集団>2000年12月、芽室町の農家を中心に結成。現在、農家12人が所属している。畑で無線LAN(限定された範囲でのコンピューターネットワーク)を構築し、温度や湿度などを自動的にパソコンに送信するシステムも研究している。

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