生き残りにかける
全国自治体に学ぶ

まちのかたち 変わる地方自治=8=

千葉県市川市


コンビニ端末で情報提供
市民の視点に立つ電子行政
民間と競争で意識改革も

 今やどこのコンビニにでも見かけるタッチパネル式の情報端末。都心で画面をのぞくと「千葉県市川市」のボタンが見える。実際に試してみたが特に難しいことはない。画面に従ってタッチパネルを押していく簡単な操作で、市の行政情報が引き出せた。

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「360+5情報サポート」の仕掛け人の井堀企画政策部情報システム課長

24時間どこでも

 「24時間どこにいても行政サービスが受けられるのが最大のメリット」と同市の井堀幹夫企画政策部情報システム課長は胸を張る。都心から電車に揺られて約20分、市川市は商店と住宅が密集するありふれたベッドタウン。2000年5月、ここからコンビニエンスストアの情報端末で行政情報を提供する全国初のサービス「360+5情報サポート」がスタートした。

 発想のきっかけは阪神大震災だった。震災から2日後に被災地に入った井堀課長は「役所が大混乱しているのに、普段と変わらないコンビニに存在感を感じた。住民の多くは昼間、都内の学校や会社に行っているので、行政情報を得るために、役所に来なければならないのは不便。そこでコンビニを利用した」と振り返る。物流システムが整備され、チケット予約などのための情報端末まである場所を利用しない手はない、と提案した。

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施設予約も可能

 役所内には未知の事業に異論もあったが、情報化による行政改革を掲げる千葉光行市長(59)の「失敗しても責任はおれがとる」の一声がプロジェクトを後押した。360度(どこからでも)、365日利用できるから、こう名付けた。現在首都圏のコンビニ(ローソン、デイリーヤマザキ)1600店からアクセスできる。帯広市の「北のくらし情報システム」のように専用パソコンの設置が必要なケースと比べ、既存の端末を利用することでコスト面、設置数ともに圧倒的に有利だ。

 「サポート」の「市政の窓」では決算や事業などの各種報告書などが閲覧できる。バリアフリー対応状況から検索できる福祉施設情報や、公民館、テニスコートの利用予約も可能。中には大気中の二酸化窒素濃度分布の表示機能まである。

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 「サービス開始以降は公民館などの利用者が約2倍になった」と井堀課長はデータを示す。コンビニとインターネットでの利用件数は1カ月平均で約10万件。最もアクセスの多い施設予約だけみると、ネット予約は公民館で4割、テニスコートは100%。このうちコンビニからの予約も2割程度ある。井堀課長は「今まで申し込んでいなかった人が増えている。確実に利用しやすくなったということ」と話す。

 行政にとってコンビニでのサービス実施にはもう一つの狙いがある。売れない商品があっと言う間に棚から消えてしまうように、だれも利用しないような情報であればすぐにでもコンビニがそっぽを向く。当初利用者からは「使いにくい、ほしい情報がない」などの不評もあったが、職員が街に出て午後9時すぎまで利用者に聞き取りして改善していった。井堀課長は「本当に必要な情報を提供するために民間との競争もある。“利用してもらっている”という視点が大切で、これが行政の意識改革にもつながる」と強調した。

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電子市役所も開設

 役所の最寄り駅・JR総武線本八幡(もとやわた)駅前に完成間近のビルを見た。2月落成するビルは「情報プラザ」と命名され、テレビ電話を使った申請や届け出ができる電子市役所がオープンする。新たに発足する地域情報化NPOも拠点を構え、市と市民、企業や大学が参加して、情報技術を利用したコミュニティービジネスを支援していく。根底にある「いつでも、どこでも、だれでも」という考え方が、市民の視点に立った電子行政の理想に思えた。
(年間キャンペーン取材班=古川雄介)(第1部おわり)(02.1.11)

千葉県市川市
 <市川市>千葉県西部。人口45万6229人(2001年12月1日現在)。江戸川を挟んで都心に隣接、ベッドタウン化が進んでいる。人口密度は県内最高。学園も多い文教・住宅都市。

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