生き残りにかける
全国自治体に学ぶ

まちのかたち 変わる地方自治=7=

茨城租税債権管理機構


広域行政組織
84全市町村で構成、滞納整理
回収困難な事案に絞る

 JR水戸駅近くの茨城県水戸合同庁舎の最上階、7階の一番奥まった部屋が、いかめしい名の茨城租税債権管理機構の事務所。入り口には公売の掲示板。中に入ると、警察署の電話番号などを明記した緊急連絡先が、7、8枚、壁に張られているのが目に付いた。

 「滞納者が興奮してきたら、職員が1人、2人と取り囲むように座っていく。言葉じりをとられないように、冷静にき然とした態度で接するよう指導している」。倉持公三事務局長(60)は、職員が来訪者と応対する相談室を指さしながら、普段の業務風景を説明した。

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受付に公売広報ボックスが置かれた事務所

徴収率90%割る

 「税金よりローンの支払いが先」など不況の影響もあり、税金の滞納は全国的に増えている。茨城県の場合も市町村税(国保税除く)の滞納額は1999年度、467億3800万円に膨らみ、徴収率は89・8%とついに90%を割り込んだ。全国47都道府県中、41位(北海道は90・9%、38位)。93年度に比べ滞納額はほぼ倍。このままでは税の公平さを保てなくなるとの危機感から、2年間の検討の末、昨年4月、滞納整理の専門機関として同機構を設立した。県の84全市町村で構成、業務を各自治体の整理困難な事案に絞ったのが特徴だ。

 構成市からの派遣職員(50)は、倉持事務局長の横で続けた。「税関係は役場の業務の中では異質。一生懸命やっただけ、住民との摩擦が多くなり、周りの職員からはトラブルを起こしてばかりいると見られた。踏み込んで対応できるのが利点」と強調した。「知り合いが多く強い態度に出られない」など、十勝でも聞いた税務関係職員の苦労話を思い出した。

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2億8千万円回収

 立ち上げから8カ月。各市町村が滞納者に、債権を機構へ移管する旨を通知したところ、通知者全体の約1割の992件、約2億6000万円が納付された。納付約束は806件、約13億4000万円。アナウンス(間接)効果だけで、16億円のめどが付いた。昨年12月現在、実際に同機構が引き受けた事案は1017件、税額で約40億円。うち、完納させたのは60件。抵当権設定9件、差し押さえ265件。さらにこれまで市町村では行っていなかった不動産公売も2件実施、約2億8000万円を回収した。

 「第3セクターの破たんなどで、行政の別組織が厳しい目にさらされていることは十分承知。県の職員時代(2年前に退職)には、正直言ってこれほど成果と収支を気にしたことはなかった」。倉持事務局長は、設立の効果をこう言って締めくくった。

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自治体に温度差

 厳しさを強調した背景には、各市町村の滞納対策と機構に対する温度差、自治体事情がある。「滞納対策は一つの課だけで支えられる問題ではなくなっている。同機構の存在を限りなく利用させてもらっている」。東京に近く、ニュータウンとして人口急増の龍ケ崎市収納課。しかし、一方では「(各自治体で)徴収業務を行っているのになぜ任せるのか。職務放棄では」「どうして自分の案件が移管されるのか」など、滞納者からの批判が予想、自治体によっては住民感情への配慮が働き、機構の利用度合いに差が出ている。

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存続は実績次第

 実際に、84市町村のうち、債権を移管したのは現在のところ69市町村で、収入に直結する引受件数は、初年度予定1410件に達していない。「必要がなくなったら(機構を)つぶす覚悟はある。1市町村ではできない難しい滞納案件を処理し続けていくことで、構成市町村の理解を得ていきたい」(倉持事務局長)。自治体の1業務を特化させた新組織の維持存続は、実績重視の企業論理が突き付けられている。
(年間キャンペーン取材班=近藤政晴)(02.1.10)

茨城租税債権管理機構
 <茨城租税債権機構>地方自治法に基づく一部事務組合。県が支援。職員は24人で、ほとんどが県と構成市町村の派遣。顧問に弁護士、国税局や警察署OB6人。各市町村一律5万円と1件の処理につき、20万3000円の負担金などが収入で、初年度の予算は2億8950万円。

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