生き残りにかける
全国自治体に学ぶ

まちのかたち 変わる地方自治=4=

岩手県滝沢村


企業感覚の運営
「住民は顧客、サービスは商品」
ブランド化、差別化進める

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情報公開を徹底

 「こんにちは、どちらへご用ですか」。日本一人口の多い村として知られる岩手県滝沢村の役場に入ると、受付の女性がはきはきとしたあいさつで出迎えた。吹き抜けのロビーを見上げると「ISO9001/14001認証取得」「行政品質の向上に取り組みます」との大きな文字が壁に。雰囲気の明るさに驚かされた。

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「住民を顧客」ととらえ、徹底したサービスの満足度を上げるための取り組みを続ける滝沢村役場

 同村は「役場と住民の相互不信を取り除くため行政の中身をすべて見せる」ことを方針に徹底的に情報公開を進め、1998年に自治大臣表彰を受賞。全国の役場・議会関係者が視察に訪れるまでになった。しかし以前は「雰囲気が暗く窓口の対応も遅い」と住民からの評判はすこぶる悪かったという。今の姿からは想像しがたい。

 同村の特徴は、行政経営を企業経営に見立てた改革。94年12月、初登庁のあいさつで民間出身の柳村純一村長(51)が職員に「弊社のみなさん」と呼び掛けたことが今も語り草になっている。

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「民間の厳しさ」

 「住民は顧客」「サービスは商品」−。柳村村長は、職員に対してことあるごとに、住民の立場から見た行政サービスの在り方を意識するよう求めた。「役場が変わり、サービス向上に向けた改革姿勢を示すことで、住民の信頼を回復できる。そこから自治への参加意識が生まれる」

 縦割り組織を見直すための係長職の廃止(99年)、国内で初めてとなった環境問題の国際規格ISO14001と品質管理規格の9001の同時取得(2000年)。取り組みの過程で、職員の意識に大きな変革をもたらしたことは、雑務をそつなくこなす職員の姿を見ただけで想像できた。

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 00年度からはアメリカの民間企業で職場改善運動として用いられている「経営品質向上プログラム」の行政版を導入。外部機関が「目的」「住民の満足度」「説明責任」など細部にわたり事業をチェックする。同村の総合評価は「Bマイナス」。何が駄目で何が欠けているか。びっしりと記載された数十ページのリポートには一切の甘えはなく、「民間の厳しさ」がうかがえた。

 取り組みから7年。政策情報室の中道俊之室長は「『何のためにやるのか』『何につながるのか』という考え方が職員に浸透してきた。カルロス・ゴーン(日産自動車社長)の企業哲学を語る若い職員もいる」と顔をほころばす。

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住民の意識も変化

 住民の意識も変化してきた。昨年村が行った「サービス充実と住民負担」に関する調査では、半数以上の人が「負担もやむなし」と回答した。初めての調査だが、柳村村長は「『役場があれだけやっているのだからわれわれも…』という住民の信頼が得られてきている」と満足げだ。

 数々の取り組みには、地方分権や合併など厳しい課題が渦巻く時代を前に、住民に支持され、セレクト(選択)されるための高い戦略がうかがえる。周囲から冗談交じりに「社長」と呼ばれる柳村村長は続ける。「大変な時代だからこそ攻める。滝沢村が全国のモデルとなるよう、村のブランド化と差別化を進めていく」。全国から常に「先進自治体」の1つにあげられる村の挑戦は続く。
(年間キャンペーン取材班=金澤航)(02.1.7)

岩手県滝沢村
 <滝沢村>岩手県の北西部、盛岡市の中心街から8キロに位置する。2000年2月に人口5万人を達成し、「人口日本一の村」になった(01年11月末の人口は5万1474人)。主要産業は稲作、野菜、酪農など。職員数は321人。

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