埼玉県上尾市 −下−

◇模索続ける「自立」の道筋◇

さいたま市と絶えず比較

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「発展は望めない」

 「自立はできるよ。つぶれる自治体はないから。けれど発展は望めない。若い人に魅力あるまちもつくれない。合併したさいたま市と差ができてしまう」
 昨年7月の住民投票で、埼玉県さいたま市(浦和、大宮、与野旧3市)との合併を拒否した上尾市の将来に対し、合併推進派で同市議会の深山英孝議長(62)は辛らつな言葉を並べた。
 住民投票後の1年は、「自立のまちづくり」を探る1年でもあった。上尾市は「住民投票で、市民の意見を聞く機会を持ち、子育て水準の高さを認識した。今年の予算で30人学級を実現したし、専門に地域の声を聞く担当も置いた。市民に顔を向けた市政の流れができている」(総合政策課)と、変化を強調する。一方で時間外手当など各種手当削減や一部業務の民間委託など経費削減策を進める。

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通勤通学時間帯以外は人影の少ない上尾駅。さいたま市に隣接し、さらなるベッドタウン化を懸念する声は強い

将来の財政に不安感

 しかし、住民の声に応えた福祉重視の施策展開を、いつまで続けられるのか疑問を投げかける声もある。昭和40−50年代に全国最大の人口増を経験した上尾市は、今後急速に高齢化を迎え、当時に整備した社会インフラの老朽化も進むからだ。
 市民からも市職員の間からも「将来、財政がどうなっているか」「今でさえ人口増加に対応できず、プレハブ校舎を建ててしのぐ地区がある。政令指定都市に隣接すれば、住宅ばかりでインフラ整備が多大な負担となる」との不安がわき上がる。
 自信を持っていた税収にも、合併を否定したデメリットがにじむ。深山議長は「この1年で、数社がイメージアップを図るため、1年後に政令都市になるさいたま市に本社を移してしまっている。移転は、5キロも離せばよいことだから、これからも進む可能性がある。税収減が心配だ」と指摘。「住民条例で市民が選択したのは、住民の声が届く規模での福祉の維持向上を図るまちづくり。決して皆で厳しい行政運営を耐えようということではなかった」とする。

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「都民」の目が市政に

 さいたま市と絶えず比較、合併の拒否の判断が問われ続ける中、「何でも市がするのではなく、市民の自主性を促していくことが自立のためには必要。市民と手を携えて乗り切る」(関根章正総合政策課長)と訴える。
 行政と民間が一体となって厳しさを乗り越え将来に向かっていけるのか、まだその道筋は見えなかった。しかし、住民投票後、「上尾都民」の目が確実に市政に向き始めているのを感じた。 (岩谷真宏)(おわり)(02.7.8)

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