香川県さぬき市 −上−

◇「行政主導」住民に不満や戸惑い◇

2年の協議で5町が「市」に

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市の北西の端にある市役所庁舎。南北の交通機関がなく、一部地域の住民にとっては“遠い存在”だ

「水道料金上がった」

 「水道料金が一気に高くなった」(旧津田町民)。「市役所へ行くにも志度までは電車もバスもない。年寄りには大変」(旧大川町民)。
 高松市から特急で15分。4月に香川県東部(東讃)の5町が合併して誕生したばかりのさぬき市に入った。市役所のある旧志度町は国道沿いに住宅と商店が広がるが、高松市のベッドタウンという印象が強い。内陸の3町は水田の中に住宅が点在し、静かな農村風景が広がっていた。
 旧津田町は水道料金が5町の中で一番安かったが、新市への移行に伴い、一般家庭の1カ月平均使用量20立方メートル当たりで380円値上がりし、2670円となった。水道料金の高さを指摘した50代の飲食店経営者は憤まんを「町や議会が合併を決めてしまった。住民に是非を問うべきではなかったか」と続けた。
 旧大川町の水田で作業を終えたばかりの60代の女性は、北端の旧志度町のさらに西にある市役所の遠さを嘆いた。志度までは旧寒川町を経由して、車で移動して20分以上。東西に鉄路はあるが、南北には交通機関がない。南部の山間部の住民が「これでは若い人は皆、高松や志度に出てしまう」とつぶやく。

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単独で将来推計立たず

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 高松市を中心に栄える西讃に比べ東讃には市が1つもなかった。核となる都市を誕生させようと1999年、住民から東讃8町の合併協議会設置を求める発議が出されたが、2町の議会で否決され白紙に。しかし、同年、5町による合併研究会が発足した。
 東讃は県内でも高齢化が著しく、99年時点で財政構造の硬直度を示す経常収支比率は大川、長尾、寒川の3町で80%を超えていた。交付税削減の動きの中、単独での将来推計に見通しが立たない状況では選択肢はなく、以後は行政側がイニシアチブをとって合併論議が急加速した。翌年に法定協議会を設置、2年後に合併した。
 「各方面に相談していては2年での合併など到底無理。実際協議の終盤には吸収合併ではないかだとか、志度町が他町の財政負担を押しつけられるなどの意見も出かけていた」。元長尾町総務課長で、合併協議会の事務局長を務めた松原典士・市総務部長(58)は苦笑しながら明かす。
 合併協議の中で5町の住民に対するアンケートが行われたが、合併に「賛成」か「反対」かを問う項目はなく、合併後の市に何を望むかだった。住民は新聞やテレビで合併の動きを知ったという。早々と決まっていた2002年4月という期日に向かい、合併に関心の薄い住民からも聞いた「行政主導」型で進められた感が強い。

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元の町に帰属意識

 「サービスは高く、負担は“応分”。負担を低く設定しては財政が苦しくなるのが見えている」。水道料金が大幅な値下がりとなった地区は喜んでいる一方で、値上がりした地区に対しては「2、3年後には県外から買う水の割合が多くなり、合併しなくても値上がりしていた」と説明に躍起だ。
 旧5町の役場は支所に変わり、住民はこれまで通り証明書の発行や届け出などのサービスが受けられる。「来年4月には5町をめぐる市営バスを運行する見通しで、公共施設の連携などを図る。東西南北の幹線道整備も必要」(松原部長)。
 元の町への帰属意識が一部住民にはまだ根強い。変化への不満や戸惑いをどう解消させていくかが、誕生したばかりの市に突きつけられているのを痛感した。(古川雄介)(02.7.5)


 <メモ>さぬき市は志度、津田、長尾、寒川、大川の旧5町で構成、人口5万6889人(4月1日現在)。面積は158平方キロメートル。合併特例法の期限の05年3月末までに合併した場合、国の支援措置として水道料金などの公共料金の格差是正に要する経費が特別交付税措置される(支援期間は3年間)。


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