新潟県佐渡 −下−

◇市長と議会火ダネ残し最終判断へ◇

全島1市実現へ「正念場」

 「住民投票条例は市長に対し、反旗を翻した意味ではないのだが、市長はどういうわけか意をくんでくれなかった」
 両津市議会で市町村合併問題の調査特別委員長を務める全島1市合併推進派、権代茂樹市議(67)は昨年12月の議会と市長との対立を振り返る。

photo
市町村合併問題が論議の中心となった6月定例市議会。答弁する川口市長(手前)と竹内議長

◆−−−−−−−◆

住民投票条例で対立

 川口徳一市長(63)=2000年1月再選、2期目=は、昨年11月全世帯を対象にしたアンケート結果(メモ1参照)を根拠に「全島1市」の意思を表明した。
 これに対して、市議会は「回答率が43%と低く、信頼性にかける」などとして、12月定例会で議員発議の住民投票条例案を可決した。
 川口市長は「議会の住民投票条例は自分に対する不信任」と反発。地方自治法に基づき、議案審議をし直す「再議」に付した。それでも議会は再び可決。条例が成立した。
 権代市議は「両津はこれだけきっちりと住民の意向を把握して協議会に臨んでいるんだという姿勢を示せば合併論議もリードできたはず」とし、市長の議会との対話不足の姿勢に不満を募らせる。

◆−−−−−−−◆

「町村に吸収」で不満

 一方で「町村に吸収され、消えていく市」に向かう現状に不満を持つ議員もいる。
 「仮に全島合併で7万2000人の市が誕生したとしても、同規模の市を例にとれば、島全体で予算の約半分の280億円になってしまう。年間200億円がなくなれば1万人の雇用に影響する。それをカバーする産業育成の手だてもしないうちに合併するのはリスクが大きすぎる」
 両津市議会の竹内道廣議長(54)は全島1市に向けた動きにクギを刺し、「最初は2つ、3つにするなりして最終的に1つを目指すべきだ」と段階的合併を主張する。
 市議会では3月に推進派が議員連盟を発足。メンバーは議員18人のうち11人を数える。120日以内に実施するとしていた住民投票は、3月に「説明会を開き、住民の意見がきっ抗したときに必要なら投票を実施する」と条例を改正、先送りしている。

◆−−−−−−−◆

情報浸透が不十分

 各市町村は10市町村の住民らで組織した新市ビジョン検討委員会(委員長・渡辺庚二かもこ観光センター専務)が近くまとめる新市ビジョン構想、庁舎位置(メモ2参照)などの基本項目を持ち込み、それぞれが住民説明会を開催。9月議会で議決される。
 「交付税がどうのこうのと言われても分からない」と夷(えびす)本町商店街協同組合の中澤健之助代表理事(62)が打ち明ける。市民にとって合併論議は「まだ上の方でやっている段階」という受け止めも強く、住民に十分な情報が浸透しているとは言い切れない。8月の住民説明会で異論が出れば、議会との対立の火ダネを残すだけに、全島1市実現は「まさに正念場」(川口市長)。
 十勝管内でも町村会がブロックごとの研究協議を行っている段階。帯広市が町村会と歩調を合わせた協議には至っていないが、「市」と「町村」の合併に潜む難しさを佐渡が教えてくれたような気がする。(井上猛)(02.6.29)


 <メモ1>両津市は昨年10月から11月にかけて市内の全6251世帯を対象に実施。回答率43・6%。「合併の必要性」については回答者の62・6%が「必要」と答え、そのうち「全島1市」は62・4%、「部分合併」も35・0%あった。

 <メモ2>川口市長は、2月の協議会で「佐渡の中央部でよい」と発言し、両津誘致にこだわらないとの姿勢を示している。


 記事、市町村合併に関するご意見、ご感想はファクス(25・2700)、Eメール(machi@kachimai.co.jp)の「まちのかたち」係で受け付けています。



|2|index

HOME