広がる川の仲間たち(8)

子供たちに川遊びの体験塾


★北上川の取り組み(下)★

付き合い方や大切さ指導

北上川流域連携交流会の下流域代表を務める新井偉夫さん(59)は1997年、交流会とは別に、ホームグラウンドの宮城県石巻市で市民団体「ひたかみ水の里」を立ち上げた。団体名は北上川流域が古来、「日高見(ひだかみ)国」=蝦夷のいる場所という意味=と呼ばれていたことから付けた。
「すべての生き物は水際で暮らしており、人間も川とともに生きて行かなくてはならない。川から学び、川と共存するライフスタイルを理解するために、より具体的な体験事業を展開する必要があると思った」と、新井さんは新団体設立の動機を説明する。

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「指導するというよりも一緒に遊んでいるだけ」と語る、川の達人・小本さん
「水の里」は昨年7月、特定非営利活動促進法に基づきNPO法人として申請、認可された。連携交流会自体はNPO申請を検討中で、「水の里」は東北では初めての川をフィールドとするNPOとなった。
「水の里」のメーン事業は、子供たちに川の自然に肌で触れてもらおうと開校した自然体験塾「めだかっこクラブ」だ。月2回が活動日で、小学校4年生以上(4年生未満は親同伴)が対象。スタート当初から毎回やってくる子供もいれば、夏休み期間などを利用して参加する“臨時組”もいる。「行ける時、行きたい時に」がスタンス。子供同士の口コミで交流の輪は広がり、石巻市内の児童・延べ300人が参加している。

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めだかっこクラブの先生は「川の達人」・リバーマスターが協力、カヌー遊び、魚取り、植物採集、河川パトロールなどの指導に当たっている。相手が現代っ子だけに、達人たちの苦労は多いようだ。
スタッフの一人で達人の小本裕一さん(52)は苦笑する。「なにせ川遊びの経験がないゲーム世代の子供たちばかり。カヌーに乗るにしても、きちんと動いて当たり前だという感覚だった」。家の目と鼻の先が北上川という環境で育ち、15歳のころから自作カヌーで遊んでいた小本さんにとって、これは驚きだった。スタート時は、とにかく子供たちの意識改革から始めた。

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川で遊べば水にぬれるし、川には危険な要素がたくさんある。小本さんは常識をしっかりと教え込む。しかし遊び方は子供たちの自主性に任せ、アドバイス以上のことはしない。川との付き合い方を自分の力で学ぶことで、子供たちは生き生きしてきたという。
「川の環境を守る人間を育てようなどと、かたくるしく構えたことはしない。“川と友だちになる”ことへの手助けをしているだけで、結果的に川を大切にする大人に育ってくれたら」と、「水の里」代表の新井さんは語る。
あくまでも川と遊び、川を楽しむが基本。性急な結果は求めない。雄大な北上川の流れのように「水の里」の理想は、ゆっくり、ゆっくりと、流域住民の心に浸透しつつある。
(年間キャンペーン取材班=森田匡彦、おわり)(00.1.10)



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