広がる川の仲間たち(7)

川への案内役担う人材育成


★北上川の取り組み(上)★

流域に広がる強固な結束

総延長249キロ、流域面積1万150キロ平方メートルの国内を代表する一級河川、北上川。岩手、宮城両県にまたがり悠然と流れる北上川の自然は、まさしく地域の歴史、文化そのものだ。流域にはカヌー、イカダ下り、歴史文化研究など北上川をフィールドとする民間団体が点在する。これら北上川を愛する住民有志が集まり1995年、「北上川流域連携交流会」が発足した。
「北上川と私たちはどのように付き合っていくのか、という素朴な問い掛けが出発点だった。県や市町村の垣根を越えた広域組織で画期的なことだった」と語るのは、交流会で下流域リーダーを務める新井偉夫さん(59)=宮城県石巻市で設備会社経営=。交流会は広報紙「川の便り」の発行、各種イベントの参加を通して流域住民の結びつきを強めていた。

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流域の民間団体が県や市町村の垣根を越えて手を携える北上川(石巻市内の河口付近)
ところが96年、交流会にひとつの転機が訪れる。北上川流域市町村を「川の駅」とし、多目的広場や親水護岸、記念館などを整備する「水辺プラザ構想」が浮上したのだ。交流会にも当然、さまざまな相談があると思った。しかし事業は国、自治体の主導で進められ、岩手県川崎村では着工してしまう。交流会はほとんど“かやの外”に置かれたのだった。
「何の相談もなければ、こちらから提案することもできずショックだったね。当時の交流会が、その程度の存在でしかないことを思い知らされた」と、新井さんは振り返る。
これをきっかけに交流会内部では、会の存在意義についていろいろな議論が交わされた。「われわれに何ができるのか…」。その中でたどり着いた結論が「歴史、文化、産業、遊びなど、川に関するプロフェッショナルを増やそう」ということだった。こうして「リバーマスター(川の達人)スクール」が96年にスタートすることになる。

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リバーマスタースクール校長の新井さん。「川の達人は各地で活躍しています」
同スクールは16歳以上(当初は18歳以上)の男女を対象に、初・中級の二コース。川遊びの楽しさ、河川愛護の大切さを教え、川への案内役を担う人材の育成を目的とした。昨年までに7回を開催、約150人が受講した。
中級コースで学んだ40人は晴れてリバーマスターに認定され、現在は各地域の指導者として活躍しているという。同スクールの校長は新井さん。「北上川流域の人的交流を促すのに抜群の効果があった」と胸を張った。北上川の取り組みを見本に、川の達人養成事業は全国各地に広がることになる。

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当初はパートナーとして認めてもらえなかった交流会だが、精力的な活動と本音でぶつかり合う姿勢が見直され、今では行政はもとより地元財界とも対等公平に協力し合う組織へと成長した。
「道路は人や物が移動するだけだが、川には水が流れ、生き物が生息している。憩いのある場所だからこそ人と人との交流が可能になる」と新井さん。北上川流域の人の輪は着実に広がり、より強固な結束を築いている。
(年間キャンペーン取材班=森田匡彦)(00.1.9)



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