広がる川の仲間たち(4)

“川づくり”の技と心伝えたい


★流域生態研究所★

新たな河川整備を探究

「水深も、流速も、構造も複雑なほど、魚や昆虫、植物にとっては生活しやすい環境なんです。でも川についてはまだ知られていないことが多い。私は“川づくり”の技と心を伝えたい」と、江別市の環境コンサルタント、妹尾優二さん(48)は話す。
昔ながらの自然が残っていると言われる北海道でも、ダムやコンクリート護岸など河川改修のため、川は大きくその姿を変えた。そこにすむ魚、昆虫、植物は消え、生態系が破壊されつつある。自然保護が叫ばれるなか、妹尾さんは1994年、自宅に流域生態研究所を設立した。

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妹尾さんから千歳川上流で川遊びを学ぶ子供たち(1999年7月26日撮影、妹尾さん提供)
同研究所は幻の魚「イトウ」や「オショロコマ」「シシャモ」など魚類を中心とした生態系の調査・研究、生態系保護に適した魚道や河川改修の提案などを行ってきた。会員は元大学教授や民間人ら6人。「川がどうあるべきか、そこにすむ生物がどう生きているのか、疑問点や解明されていない事象を現地を歩いて調査している」(妹尾さん)という。
妹尾さんが「多自然型工法」の考え方を取り入れたのは70年代ごろ。同工法の先駆者の一人だ。「実を言うと、コンクリートの三面護岸は図面だけを見て線を引けばいいのだから設計が非常に楽。でも川の原風景は中州や川原、深みがあって複雑だ。生態系を守るには、これにいかに近づけるかが課題。数字や基準だけではおかしくなる。経験と一緒になって初めて生きてくる」と、妹尾さんは説明する。
学校の授業の中で、子供たちが水辺環境に触れる機会を設ける「水辺の楽校」で、妹尾さんは「水辺の達人」も務める。「川づくりも人づくりも数字で動かしてはダメだ。子供たちは自然の中で生きる技、優しさを学んでいる」。研究所のフィールドワークでの成果をこうした機会にも伝えている。

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十勝にも何度か訪れ、管内の川にも見識がある。「十勝の川は“いい川”に造り替えることが可能だ」と強調する。「農業の大規模化のため、多くの河川が排水路として改修されてしまった。しかし、流域が平野で大洪水が起こりづらい地域であり、住民がちょっと気を配ってくれれば水が限りなくきれい。近自然工法に適していると思う」
また、川を使った農村リゾート、グリーンツーリズムの可能性も指摘する。「農村地帯は自然と一番触れ合える、さまざまな体験ができる場所だが、今の排水路となってしまった河川ではそれができない。川を造り替え、十勝独自の観光資産づくりをしてほしい」と提案する。

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「土木業者や行政は川を理解していないし、市民団体には土木がどこまでできるのかを知ってもらう必要がある」と、妹尾さんは力を込めた。公共事業は今、財政難を背景に「政策アセス」「環境アセス」などが導入され、大きな見直しを迫られている。「役所と市民社会の通訳になりたい」。妹尾さんは河川整備の在り方を独自の視点で見つめている。
(年間キャンペーン取材班=本田裕一)(00.1.6)



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