環境と調和する川づくり(8)

「水際」にタンチョウ飛来


★下頃辺川(下)★

綿密な計画、徹底した調査

下頃辺川周辺で現在でも農地化されていない湿原地帯では、ヨシやハンノキが生育し、タンチョウやマガン、ヒシクイ、オジロワシなどがやってくる。同河川の近自然工法はこうした湿原の要素を、いかにしてつくるかがもうひとつのテーマだった。

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水辺で確認されたタンチョウの足跡。水面と陸を
つなぐ干潟の出現が可能にした

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護岸の覆土やヤナギの植栽によって、主に陸上で生活する鳥類の飛来は飛躍的に増えた。しかしヤナギが密集する川の水辺は、水際で生息する鳥類が飛来する空間としては不十分。湿原にやってくるタンチョウなどが訪れるような「干潟空間」をつくることが必要だった。
干潟空間は川の浅瀬に冠水しない程度の土を盛った。これによって水面とヤナギなどの陸地をつなぐ「水際」ができた。アークコーポレーションの和田哲也さんは下頃辺川に関するリポートの中で、「多様な鳥類が利用できる川をつくるためには、できるだけ多くの要素を盛り込む必要がある。下頃辺川では水面、陸地、水際の三つが豊かな鳥類相を可能にした」と干潟的空間の重要性を指摘している。
五年前には、全国で初めて設置したというタンチョウの採餌(さいじ)ステージ周辺で、タンチョウがえさをついばむ姿が何度も確認されている。水辺の土には、三本指の足跡がくっきりと残されていたのだ。カエルや小魚など、えさが豊富になった証拠だ。
現在までに確認された野鳥は六十種類。従来工区の確認数の三倍以上だ。「下頃辺川での近自然工法は短期間で植生を回復し、鳥類の出現数も飛躍的に増加させた。想像以上にうまくいった」(道開発局帯広開発建設部)と、工事関係者は、工法の成果を強調する。

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同川周辺にいたタンチョウ。
1997年6月撮影

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成功のカギとなったのは綿密に練られた計画と徹底した調査だ。アークコーポレーション環境調査室長の室瀬秋宏さんは「近自然法を行っても川の自然環境が劣化しては元も子もない。事前の環境がどうであったのか、工事がどんな効果をもたらしたのか『ビフォー・アフター』にこだわった生態調査が必要」と語る。
下頃辺川では工事の開始以来、毎年、植生や鳥類の出現に関する生態調査が行われ、室瀬さんらが丹念に川の周辺を歩き回っている。ここで得たデータはさらに分析され、よりよい工法に修正するための検討材料になる。各工区で行われたさまざまな試みは、生態調査をフィードバックした結果なのだ。
「結構手間はかかりますけどね、これをやらないと意味がないですから」と室瀬さん。環境と調和する川づくりには、近自然工法に代表される技術と、それを貫徹する人間の熱意によって支えられている。
(年間キャンペーン取材班=金澤航、おわり) (00.10.31)



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