環境と調和する川づくり(7)

近自然工法で多様な生物


★下頃辺川(上)★

ヤナギの植栽が奏功

「コンセプトは多様な生物が生息できる川」

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従来の下頃辺川。洪水時の流下能力を第一に考えていたため、
流れは真っすぐ
帯広開発建設部が一九九二年からスタートした近自然工法による護岸工事が行われている浦幌町の下頃辺(したころべ)川。ヤナギの揺れる川原を眺めながら、工法の設計と周辺の生育調査を続けている帯広市のアークコーポレーション環境調査室長・室瀬秋宏さんが語った。「そのために行ったのが、ヤナギが川を覆い、流れの速さに変化があるようなバラエティーに富んだ動植物の環境づくりだった」

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 工事を始めて八年が経過、室瀬さんらの定期調査では、近自然工法の工区で、従来工区の三倍近い鳥類の数を確認。五年前には全国初の「タンチョウ採餌(さいじ)ステージ」が設置。カワセミ、コヨシキリなどの姿も頻繁に見られる。かつての泥炭地帯を流れる人工河川は今、鳥類を中心とした野生生物の棲み処(すみか)として確実によみがえった。
同川の護岸工事は、道開発局が提唱したAGS(水と緑の戦略)のモデル事業として進められてきた。「防災機能を保ちながら、周辺生物の環境に配慮した自然に優しい川づくりの試みだった」(高橋季承・同局帯広開発建設部治水課長)。
 従来の下頃辺川はブロックと鉄製の板による低水護岸工事が行われていた。流れはほとんどが直線。防災機能は飛躍的に高かったが、植物はコンクリートのすき間からわずかにのぞくだけで、生物が極めてすみにくい環境だった。


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工事を請け負った室瀬さんらが手本としたのが「自然河川」。その中でも重要なポイントとなったのが「ヤナギ」だ。
工事では、護岸ブロックに土をかぶせ、ヤナギの植栽と牧草のは種を実施。覆土の上にもヤナギを植えた。「水際にヤナギが繁茂すると、河川に落ちた葉は水生昆虫のえさ、ヤナギにすむ陸生昆虫は魚のえさになる。その結果、魚や昆虫を求めて鳥類や他の動物類がすみ始める。豊かな自然の循環機能を基本にした」と語る。実際、同川周辺ではヤナギの生育状態によって鳥類の飛来数に飛躍的に差が出るようになった。

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「変化」−。下頃辺川でさまざまな生育環境をつくるためにこだわったキーワードの一つだ。流れの速さや高さに強弱をつけるため、川の中に巨石を設置。たい積した土砂が加わり、新たな動植物の生育環境が形成されている。同工法による護岸工事の総延長は二千七百五十八メートル。工事を監督する帯広開発建設部は近自然法の工事をさらに上流に伸ばしていく予定だ。
「予想したよりも自然環境の回復は早い」と工法の成果に驚く室瀬さん。「基本的な条件を整備し、後は川と自然のもつ力に任せる。下頃辺川は、そうした川づくりの一つの成功例だと思う」と力をこめた。
(年間キャンペーン取材班=平野明) (00.10.30)



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