環境と調和する川づくり(5)

河畔林増やし「地域の宝」継承を


★ヌップク川 (下)★

自然回復も課題は水量

水産庁さけ・ますふ化場十勝支場(現さけ・ます資源管理センター十勝支所)の取水用えん堤保存が決定し、貴重な自然環境を守られた帯広市大正町のヌップク川。河川管理者の帯広土木現業所では一九九六年、住民要望で実現した経過から、官民一体の川づくりに向けて動き出した。管内初の試みである意見交換会「円卓会議」の設置。住民参加型河川管理のモデルケースともいえる取り組みだった。

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親水事業も活発に展開するヌップク川をきれいにする会。
カヌーで川と遊ぶ子供たち
議論の中心となったのが、同支場のコンクリート製養魚マス撤去後の河川整備について。「土現の提案で、施設設置による人工的な流れを自然な流れに戻すことになった。いい形で川づくりを進めようと住民サイドでも積極的に発言していった」と、ヌップク川をきれいにする会事務局長の白田正樹さん(38)。円卓会議の中で、飛び石設置や深みを設けて魚が住めるように―など、自然回復型工法の提案が行われた。
帯広市もまた保全への積極的姿勢を示し、九七年三月にヌップク川の一部約四万平方メートルを自然環境保全地区に指定。環境庁事業を導入して、流域約二万四千平方メートル(うち約五千五百平方メートルは大蔵省からの無償貸付地)を取得したほか、木棚や木道設置などの施設整備も行っている。
「今は養魚マスのあった昔の面影は全くない。同じ川とは思えないほど望むべき形に変ぼうしている」。白田さんは、流れが直線的な改修前と蛇行した現在の様子の二枚の写真を示しながら笑顔を見せた。

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本来の姿へと復元される一方で、ヌップク川が自然河川として根源的な課題を抱えていることも明らかになった。「水量が年々減少している。今では上流のニジマス養殖業者のポンプアップで維持されているのが現状なんだ」と、同会会長の芹沢忍さん(58)は打ち明ける。「水を増やすには木を増やさなければ」。豊かな河畔林造りに向けた活動が始まった。
土現や市からも苗木の提供を受けながら、九七年春から年に一回、地元小学生を交えて植樹を実施。ドングリから苗木を育てて、三年後に植えようとする企画もスタートさせる。ただ、森を広げたくても場所がないという問題が、今は生じ始めている。
川の隣接農地の一部に植樹させてもらいたいと考えている同会。しかし、大変な苦労の末に築き上げられた農地でもあり、農家との合意形成はなかなか進まない。芹沢さんは「同じ地域の住民として、この素晴らしい環境を残すための協力を地道に訴えていきたい」と決意をにじませる。

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同会のさまざまな取り組みは、地域づくり自治大臣表彰受賞や国際協力事業団(JICA)研修カリキュラムへの導入などの形で高い評価を受けている。しかし、芹沢さんは「会の活動は畑で言えば耕している段階。まだ種もまいていない」と言い切る。
「どんどん河畔林を増やしていって、樹木による緑のトンネルがさらに大きくなれば。自分たちの代ではとても終わらない」。次世代を担う子供たちに「地域の宝」が継承されることを期待している。
(年間キャンペーン取材班=森田匡彦) (00.10.25)



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