環境と調和する川づくり(3)

“昔ながらの川”よみがえる


★新オシタップ川★

人工的に自然の植生復元

澄み渡った青空の下、川の水は蛇行しながら穏やかに流れる。周辺にはヤナギなどの樹木や野草が生い茂り、時折野鳥が姿を見せる。「自然に囲まれた“ふるさとの川”そのもの。数年前までは、直線でコンクリートブロックがむきだしの味気ない川だったとは想像できないでしょう」。池田町千代田の新オシタップ川に隣接して研究所を設けている農学博士・大原洋一さん(A・G・E研究所代表)は川を見渡してこう語った。

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実験区内の川と大原さん。直線だった流路は蛇行、河床部の植生も回復して、3面張りの川とは思えない自然そのものの川になった
両岸と川底にコンクリートブロックを敷き詰めた「三面張り」の河川は、治水上の利点から道内各地でつくられたが、自然環境と調和しないのが難点とされてきた。一九八四年に改修された新オシタップ川もその一つ。改修当時、川の水はブロックに沿って直線に流れ、植物も見られなかった。
ところが、同川は上流の砂防ダムや落差工が効果的に作用して水流が安定し、上流から運ばれ堆積(たいせき)した土砂によって水が自然な曲線を描いて流れるようになった。土砂は約十年間で約一メートルほど積もり、川の付近には自然植生が形成され始めた。
 帯広土木現業所はこれに着眼し、一九九六年、「人工的に河川周辺の自然環境をよみがえらせることができないか」と、大原さんの助言を得て治水と自然環境復元の両立を図るモデル実験を同川で開始した。
 実験では、道道帯広−浦幌線上にかかる蝶田(ちょうだ)橋から上流の約二百メートルを、「公園的利用ゾーン」「観賞型ゾーン」「自然尊重型ゾーン」の三つに区分。ゾーンごとに管理方法を変え、環境の変化を研究した。九八年にはさらに五十メートルを実験区に加え、ヤシガラ製の土のうを積んでさらに水の流れを曲げ、挿し木などをして植生の回復を図った。


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この結果、新たに水の筋ができ、土のうや水中に含まれていた植物の種子によって川の周辺に緑が広がった。「三面張りの川はコンクリートブロックで地面と川とが断絶されているため危険」と言われていたが、実験後は、川の縁が堆積した土砂と植物で滑らかにつながった。
大原さんは「短期間でも、植物とのバランスが取れた“昔ながらの川”が再現できると立証できた。この結果は全道の川のモデルになるはず」と語る。帯土現では実験結果を受け、今年度中にマスタープランをまとめることにしている。
現在の課題は、魚が上る川への改良だ。帯土現では「魚が戻れるようにするためには、落差工の解消、蝶田橋の下流に張り詰められている連結ブロックの改修が必要。今月末からプランの作成作業に入り、具体的な改修方法をまとめる」(治水課)としている。

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「河川区域内に樹木が生えることは治水面で見れば望ましいものではないが、景観や生物の生息に潤いをもたらす重要な要素。この実験を通じ、新しい水辺環境整備の手法を提案したい」と大原さん。新オシタップ川の例は、自然の回復力を利用しながら、自然に近い環境を人工的に作り出す新たな手法として期待されている。
(年間キャンペーン取材班=池田有紀、写真=折原徹也) (00.10.23)

<新オシタップ川>源を長流枝内丘陵に発し、流域面積は五・九キロ平方メートル、流路延長約四・六キロメートル。「オシタップ」はアイヌ語で「オシ・タプ・シツ・ペツ」(中にある・丸い山の・ふもとの・川)に由来すると言われている。



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