川と共生する農業(5)

循環型農業の研究進む


★農業試験機関★

農家に不安、奨励策も必要

「十勝管内の牛ふんに由来する窒素は膨大で化学肥料窒素とほぼ同量。牛ふん窒素の畑地還元を進めることは、ふん尿問題の解決策であると同時に持続的農業への一歩にもなる」
近年、十勝の農業試験機関では家畜ふん尿を畑に還元し、土づくりや減肥につなげる「循環型農業」が大きな研究テーマになっている。ある試算によると、化学肥料販売量から見た管内の年間窒素施肥量は約24,000トン、これに対し牛ふん由来窒素は約26,000千トンもあるからだ。
ただし十勝には畑という広大な“受け皿”が存在する。試験機関の担当者は一様に、環境にやさしい農業に向けた十勝の潜在能力の高さを示唆する。

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道立の農業・畜産試験場は1994年、「家畜ふん尿プロジェクト研究チーム」(通称・ふんプロ)を構成、昨年春に適正処理の手引書を発行した。ほ場の種類別(畑作、野菜、牧草等)にふん尿処理物の施用方法をまとめ、関係者から大きな関心を集めた。
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河川の水質維持に向けて「循環型農業」の確立は十勝の大きな課題になっている(写真と記事は関係ありません)

中心メンバーとして活動したのが道立畜産試験場(新得町)。同畜試では現在、作物の窒素吸収量、河川や大気への流出・飛散度などから見た家畜ふん尿の適正投入量を体系化すべく、調査を継続している。
前田善夫技術普及部次長は「法規制の絡みでふん尿管理面での研究が中心だった。不適切な管理は“点”での汚染に過ぎず、面として広がらないうちに根本的な還元方法を確立する必要がある」と強調する。
一方、道立十勝農業試験場(芽室町)で3月まで主任研究員だった山神正弘さん(現・中央農試環境部副部長)は、「将来的に牛ふん窒素の3分の1は畑が引き受けるレベルにしなくてはならない」と指摘。バランスのとれた施肥と、土壌中の残存窒素を有効に消化させる適正な輪作体系の確保を説く。
問題は肝心の農家が、たい肥を使いたがらないことだ。「汚い」「雑草が侵入する」「生産性が低下する」など農家の不安は尽きない。「実際にたい肥を使う農家への啓発は大きな課題。環境調和型農業の推進は確かに生産性と相反する側面もあり、別な形での奨励策を考える時期に来ているのではないか」と、山神さんは強調する。

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農水省も数年前から、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」を農作業に導入し、環境負荷物質(硝酸窒素、二酸化炭素等)を抑える研究を始めた。同省北海道農試畑作研究センター(芽室町)も、今年から同プロジェクトに加わることになっている。
西宗昭・同センター長は語る。「アメリカなどは農業に起因する環境問題を逆手にとり、米など自国の農産物の輸入拡大を要求する根拠にしている。日本の生産者はもっと環境面での取り組みをアピールしなくては」−。川を守る視点は、十勝農業の生き残りのキーポイントになりつつある。(年間キャンペーン取材班) (00.4.11)

<LCA>
ひとつの製品の製造・使用・廃棄までの各段階で、どれだけの資源やエネルギーを使い、どれだけの汚染物質を排出するかを定量的に分析、環境への影響度を総合的に評価する手法。


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