川と共生する農業(3)

大きな負担のふん尿処理


★酪農家の悩み★

規制先行の現状に疑問も

「確かにふん尿の適正処理は必要。しかし規制だけが先行しているのはおかしい」。士幌町で酪農を営むAさんは河川環境の汚染が叫ばれる中、酪農家だけが責任を問われる現状に疑問を感じている。

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1戸当たりの平均家畜飼養頭数が乳牛92頭、肉用牛百69頭(1998年)と大規模経営を維持する十勝。酪農家にとって家畜ふん尿の処理は大きな課題だ。Aさんも乳牛320頭を飼っている。1日に出るふん尿は一頭当たり16キロ、合わせて5トン。直接、河川や排水路に流れ出ることはないが、雨と混ざると「足元がぐちゃぐちゃになる」。
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家畜排せつ物法が施行され、新たなふん尿対策が求められている酪農家(写真と本文は関係ありません)
昨年11月に施行された家畜排せつ物法では、2004年までの規制猶予と、屋根付きたい肥舎などの整備促進期間を設けた。同時に農家の負担軽減を図るため、国は特別対策として施設整備に対する公共事業と個別農家が対象の「2分の1補助つきリース事業」(畜産環境リース事業)を推進している。
Aさんは2年前に同制度を利用し、屋根付きのたい肥舎を設置した。費用は約1,000万円で、自己負担は250万円程度。しかしAさんのようにすぐ整備できたのは良い方だ。高い需要に補助が追いつかず、管内のたい肥舎の整備状況は約10%と低い

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規制を控え、たい肥舎などの整備を求める酪農家は多い。しかし本音は複雑だ。生産性向上につながらない整備の負担はそのまま自分に跳ね返ってくる。帯広の酪農家、Bさんは「集荷方法がバルククーラーに変わったときもそうだが、今回のたい肥舎はあまりに大きな負担。周りには『これを機に離農したい』と語る人もいる」と話す。
Bさんも国の畜産環境リース事業を利用した。自己負担は200万円程度だが、固定資産税や利子などは今後、自分で払わなければならない。「国がサイロをつくるよう進めたが、今は必要ない状況になった。しかしそのままにすれば固定資産税がかかる。国は何でも『つくれ』というが、つくったあとの負担はわれわれにかえってくる」−。国の方策へのぼやきはさまざまな方面から聞こえている。

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Bさんの住む帯広市内から出る家畜ふん尿は年間約32万トン。この大量の“廃棄物”を処理する方法として多くの酪農家は「たい肥化」と「リサイクル」の確立を挙げる。Bさんは「たい肥化を見直す時期がきている。化学肥料よりもたい肥をもっと使ってほしい」と期待している。
2000年の乳価政府保証価格は72.13円で、四年連続の引き下げとなった。酪農家を囲む状況がますます厳しくなる中、消費者に“自己負担”を求める声もある。「行政も支援すべきだが、安い牛乳を享受している消費者も環境に対して何らかの負担をすべき」(帯広市農務部)。川は、農業と行政、そして消費者との関係の在り方も強く問い掛けている。(年間キャンペーン取材班) (00.4.9)

<家畜排せつ物法>
環境問題化している家畜ふん尿の野積みや、素掘り投棄をなくし、たい肥としての再利用を促進する法律。ふん尿の管理が適当でないと認められた農家に対して、都道県知事は指導・助言・勧告を行い、最高50万円の罰金を科すことができる。



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