川と共生する農業(2)

国内外、地域で強まる規制


★水質水準★

家畜ふん尿対策が課題

「“1ppm”という目標はちょっと厳しすぎるのではないか」−。
帯広市環境基本計画の策定に当たり、市が昨年6月、国や道の環境担当者を集めて開いた会合で、こんな声が漏れた。同計画では河川の水質目標として、類型指定の有無を問わず、硝酸性・亜硝酸性窒素の環境基準である「10ppm」(1リットル当たり10ミリグラム)の10分の1に当たる、1ppmに設定しようとしたからだ。
photo
規制が強まる中、真の清流を維持するために、環境と農業の調和がカギを握っている(写真と本文は直接関係ありません)=写真・折原徹也
十勝支庁は「類型指定河川は生活、産業用水として使われるため国に準じた規制が適用される。ただ指定外河川で1ppmというのは厳しい数値で達成可能なのか」(環境生活課)と懸念する。国内では高すぎる目標設定…。しかし帯広市は今年3月、指摘を受けた個所は修正せず、計画を完成させた。

■−−−−−−□

管内の中小河川の水質状態は既に、軒並み1ppmを超えているのが実態だ。十勝水産用水汚濁防止対策協議会が実施した調査(1998年)によると、「日本一の清流」の札内川が0.94ppmとクリアしているものの、農村地帯を流れる十勝中部の某河川は管内最高値の4.42ppm。市が97年に行った調査でも、類型指定外のほとんどの河川が5ppm以上を記録している。
市の計画立案を担当した菅尾忠正・前環境保全課長(現企画主幹)は逆に、「今の数値で本当に住民の健康を守れると思っているのか」と、国・道の姿勢に首をかしげる。環境庁が昨年2月に定めた現行基準の10ppmに関しては、WHO(世界保健機関)なども「これで大丈夫なのか」と疑問を投げかけているという。

■−−−−−−□

photo
確かに世界的には最近、水質保全の視点で窒素の規制が強化されている。汚染源としてクローズアップされているのが家畜ふん尿だ。EU(欧州連合)諸国では硝酸塩濃度が50ppmを超える地下水、河川汚染が深刻化し、デンマークなどは飼養頭数の制限、ふん尿散布量の上限設定、施設の保管能力の確保など、厳しい規制措置を取っている。
国内でも昨年11月、「家畜排せつ物法」が施行、野積み、素掘り投棄などに罰金を規定、並行してたい肥舎の整備を促している。管内の酪農関係者は「ふん尿問題に関心のない農家などいない」と口をそろえる。が、個々の酪農家にとり新たな設備投資は大きな負担で、たい肥舎整備は進まないのも現状だ。
帯広畜産大学の梅津一孝助教授(畜産環境科学)は国内の規制に関し、「“流さない”ということに比重を置き適正処理の観点が欠けている。農家負担ばかりが増える仕組みで本当に河川保護につながるのか疑問」と指摘する。
河川・水質保全に対する世論の高まりと国際的な窒素の規制強化。農業を基幹産業とする十勝も早急な対応を迫られている。(年間キャンペーン取材班)(00.4.8)

<類型指定河川>
国が設定した基準値に基づき都道府県知事が、水域の利用目的などを勘案して指定する河川。管内では十勝川、札内川、音更川、歴舟川などの主要河川はほぼ指定されている。




1|2|3456INDEX