川と共生する農業(1)

“窒素汚染”原因調査が必要


★十勝川水系の現状★

きれいさ際立つ清流も…

「十勝の一級河川はきれいになっている。清流日本一の札内川も以前は普通の川だった。きれいさが際立ってきたのは昭和60年代に入ってから」。帯広開発建設部の高橋季承治水課長は、十勝川水系の現状についてこう説明する。
きれいと判断する基準は、有機物の存在を示すBOD(生物化学的酸素要求量)。十勝川、札内川のBODは、昭和50年代を境に急速に向上した。「水質汚濁防止法(1971年施行)により、工場などの排水基準が厳しくなったこと、下水道の普及で生活排水が改善されたことが背景にある」と見る。

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夕焼けに染まる十勝の“母なる川”十勝川。見えない汚染は進行している?(写真・折原徹也)
しかし、改善が進まない項目がある。それは全窒素だ。BODが悪化すると水の濁りなどで汚れの実感があるが、窒素は目に見えない。汚染度は化学調査でしか知ることはできない。
全窒素で見ると十勝川は、網走の常呂川などと並んで道内の下位にランクされ、最近15年は1.5ppm(1ppmは1リットル当たり1ミリグラム)前後で推移している。十勝川水系の中小河川の中には、3−4ppmの地点もある。
「道内では高めだと言っても、昨年10月に定められた硝酸性窒素の環境基準(10ppm)をはるかに下回っている」と高橋課長。ただ、「ダイオキシンや環境ホルモンに代表されるように、水質への関心は高まっている。窒素も含めて目に見えない部分もきちんとやっていく必要はある」と考える。
窒素対策の難しさは、森林や土壌などの環境破壊、工場からの廃液、生活排水など、発生源を特定しづらいことにある。家畜ふん尿や化学肥料など、農業由来の流出も無視できない。

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この“窒素汚染”に早くから着目してきたのが、北海道指導漁業協同組合(指導漁連)だ。川の汚染はサケ稚魚の養殖などに大きな影響を与える。酪農地帯の根室、網走では、家畜ふん尿や森林の減少などが原因で、水産用水が使えなくなることがあった。独自に定めた水産用水基準は、全窒素で1ppm。国の環境基準の10分の1以下という厳しさだ。
「硝酸性窒素は増えすぎると、自然のメカニズムを壊す。サケ稚魚に家畜ふん尿のような強い栄養はいらない」と、同漁連の八戸法昭環境部次長は話す。
十勝管内でも毎年、十勝水産用水汚濁防止対策協議会などが、河川調査を実施している。97、98年の調査によると、十勝川水系以外の独立した中小河川では、硝酸性窒素が4−5ppmという数値を示した所が複数あった。

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「十勝には窒素分が“高位安定”している河川もある。流域の水は、みんなで守っていかなくてはならない。そのためには原因をまず調べること」−。道内の河川を詳しく見てきた八戸次長の言葉には説得力がある。
そして農業王国の十勝ではまだ、河川への窒素流出に着目した総合的な調査は、行われていない。

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河川環境と農業の関係が今、関心を集めている。農業由来の水質汚染物質を規制する動きが、国内外で強まっているのだ。果たして川と共生する農業は可能なのか…。年間キャンペーン第2部では、生産現場や研究者の声を聞きながら、十勝の農業と川の現状を探る。(年間キャンペーン取材班)(00.4.7)



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