広がる川の仲間たち(1)

自然喪失への危機感が出発点 


★森と川実行委員会★

団体の垣根越え講演会開催

「十勝の川から河畔林が減り野鳥などのすみかがなくなることへの危機感が出発点だった。とにかく川のことをよく知ろうと講演会を開いたのだが、何せボランティアの寄せ集め。あれだけの市民が集まったので驚いた」
「森と川実行委員会」事務局の池田啓介さん(67)=元帯広市自然環境監視員=は、四年前に開いた1回目の講演会をきのうのことのように思い出す。小野有五・北大教授、藤巻裕蔵・帯広畜大教授を講師に迎え、自然と共生する川づくりを語り合った。会場の帯広市とかちプラザの視聴覚室は、240人の市民でびっしりと埋め尽くされた。
「予想以上の参加者は活動を継続する契機になった。川という身近なテーマが十勝の住民の心に響いたのだと思う」と、池田さんは振り返る。

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「いい川は蛇行している…」。十勝川も河川整備が急速に進展、自然の面影が薄れることへの危機感が森と川実行委員会の活動の出発点だった(豊頃大橋付近から河口方面を望む)
森と川実行委は1995年11月、つながりの深い川と森の仕組みや現状を知ろうと、市民レベルの学習会として発足した。集まったのは市の環境監視員、野鳥の会会員、会社員、帯広畜大生など約20人。それぞれに既存の環境団体に所属しているが、会の中では団体名を出さないのがルールだ。セクト主義に陥りやすい団体の垣根を取り払い、市民の中に飛び込むスタンスを基本とした。
活動は年3、4四回のペースで開く講演会が中心で、帯広市の支援を受け無料とし、だれでも気軽に参加できるようにした。講師の顔ぶれも多彩だ。カヌーエッセイストの野田知佑さんを招いた97年9月は、実に320人の聴衆が集まり、同種の講演会としては異例の反響を呼んだ。ある時は開発官庁の担当者を呼び、河川改修の在り方を論じたこともある。
発足当初から代表を務める安藤御史さん(57)=上士幌町で医院経営=は語る。「この種の講演会が4年間も続き、毎回200人前後の市民を集めているのは確かに珍しいかもしれない。メンバーのボランティアによる地道な活動もあるが、市民一人一人の意識が高まった証拠。“きれいだ”とされる十勝の川でさえ確実に環境は悪くなっているのだから」
講演会は15回を数えた。1冊千円の講演集も第二集まで発行、運営の貴重な財源になっている。

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「今年は川を守るための森づくりを実行したい」と語る安藤代表

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実行委では今、次なるステップを模索している。講演会主体の4年間は、川と森に対する大勢の市民の関心の深さを確認するのに、十分な期間だった。
「いい川は蛇行している、そして河畔林があり木に覆われている」
実行委の基本理念だ。「語るだけではなく行動をしなくては。河川環境を維持するために、子供から大人までが体験できる森づくり事業を考えたい」と安藤さんは話している。
(年間キャンペーン取材班=金澤航、能勢雄太郎)

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私たちの暮らしに身近な存在である川。従来の河川愛護から一歩踏み込んだ新しい形の市民運動が、十勝で、北海道で、そして全国で広がりを見せている。本社年間キャンペーン「水と緑の小宇宙」の第一部は、管内外の川にまつわる活動を紹介する。(00.1.3)



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